最終回 警視庁『大手建設会社社員殺害事件特別捜査本部』
2014年6月11日(水)放送
谷中刑事部長の隠れ家
銀座路地の山梨料理の小料理屋“躑躅(つつじ)”。0時半。
女将の由布が縄のれんを仕舞う。
カウンターで一人酔いつぶれている谷中。
由布がお椀のほうとうを谷中の前に出す。
目を覚ます谷中。
谷中「いやいや、飲み過ぎた」
由布「部長さん、珍しいですね。忙し過ぎるんじゃないですか?」
谷中「(ほうとうを飲みながら)ママのほうとうは生き返る。たいして忙しくないんだが、佐久がなあ、管理官の佐久が青臭い正義漢を私に振りかざしやがって」
由布「さくしんさん、部長さんにそんな生意気な態度を取ったんですか?」
谷中「まあ私というより経済産業省の局長にだ」
由布「経済産業省の局長?」
谷中「もちろん、東大法学部卒」
由布「部長さんのライバルですね」
谷中「この仕事、学歴は関係ない。その点は佐久と考え方は一緒なんだが事が国家レベルの話になって来ると私も多少の権謀を用いないこともない」
由布「権謀?」
谷中「私が信玄公と並んで尊敬する勝海舟が明治維新のハイライトである江戸城無血開城の交渉の際にたった一人で江戸城に乗り込んできた西郷隆盛にもはや幕府側の権謀術は無しと感服し江戸城を官軍に開城したと述べている」
由布「一人で江戸城に乗り込んだですか?」
谷中「それが西郷の凄さだ」
由布「さくしんさんも経済産業省の局長の言う事を聞かなかったんですね」
谷中「七千兆円など関係ないとぬかしやがった。まあ今回はたまたま上手く行ったが西郷は結局、明治維新の最大の立役者だったにも関わらず、不平武士に担がれて賊軍の長として自決する」
由布「まさかさくしんさんも?」
谷中「ママ、時代が違うよ。ただ今の佐久を見てると西郷と重なる。私とは生き方が違う。さくしん、何処に向かおうと言うのだ……」