科捜研の女 16
- 2016年10月20日~2017年3月9日放送
放送は終了しました。ご視聴ありがとうございました。
泉国寺の蔵の中で、 建設会社のワンマン社長(演・入江毅)の遺体が発見された。
マリコ(演・沢口靖子)が検視をしようとすると、住職の義助(演・田山涼成)が現れ、「俺が殺したんだよ」と呟く。
驚く一同に対してさらに義助は
「願かけしたのさ。欲深い連中に天罰を下してくださいってな」
と言い捨てて、不敵な態度で去って行くのだった。
土門刑事(演・内藤剛志)の捜査によると、
被害者はこの付近にある世界遺産、「龍道院」の土地の一部を買い上げ、巨大な商業用施設を建てていた。
そのことで、地学教授の小柳(演・冨家規政)を筆頭にかなり大きな反対運動が起きていたのだという。
いっぽうマリコたちの検視や鑑定の結果、
被害者は遺体発見現場である泉国寺の蔵とは別の場所で刺殺されたことが判明。
だが、遺体が発見されたとき、蔵には内側から鍵かかかっていた。
つまり何者かが蔵に遺体を運び込み、
つまり何者かが蔵に遺体を運び込み、その後なんらかの方法で内側から鍵をかけ、「密室」を作り出したのだ。
犯人はどんな「密室トリック」を使ったのだろうか。
やがてマリコたちは、泉国寺付近でいくつも不可思議な現象が起きていることを知る。
「ひとりでに鐘が鳴る」「仏像が涙を流す」といった古来から伝わる不思議な伝説に加え、最近では寺の付近で突然窓ガラスが割れたり、マンホールが浮き上がったりといった怪奇現象が起きているのだ。
蔵の内側から鍵がかかったのも、この怪奇現象のしわざなのか。
そして住職の義助が唱えていた「天罰」という言葉と、何か関係があるのだろうか。
マリコは科学の力で「怪奇現象」に挑み、「密室トリック」を解き明かそうとするのだが――
脚本 岩下悠子
監督 匂坂力祥
ゲスト
田山涼成
冨家規政
三輪ひとみ
平田舞
楠見薫
ほか
みどころ
「密室」――ミステリー好きにとっては、心踊る言葉です。
密室といえばミステリーの古典「まだらの紐」(コナン・ドイル)も、奇想天外な密室トリックをシャーロック・ホームズが華麗に解いていくお話でした。
「密室にいる人物を密室の外から殺すパターン」
「殺した後に外側から鍵をかけ、内側から鍵をかけたように見せかけるパターン」
「殺した後に内側から鍵をかけて部屋の中に隠れ、遺体発見後にこっそり逃げるパターン」
などなど、密室トリックには様々なパターンがありますが、
脚本家の岩下さんが考えた今回のトリックはかなり型破りで斬新なものです。
頭を悩ませるマリコや宇佐見に対し、
「科捜研の末っ子」的存在の呂太くんが次々と仮説を提案しますが、どれもあえなく玉砕。
しまいには「心霊現象のせいじゃない?」と非科学的なことまで言い出して、
宇佐見さんに「キミ、科学者だよね」と大人の微笑でたしなめられるシーンも。
でも、呂太くんが「心霊現象」と言い出したのにはわけがあります。
寺の向かいにある学習塾で「突然窓ガラスにヒビが入る」
という奇妙な現象が起きていたのです。
塾に通う女子高生たちがこの怪奇現象を撮影した動画には、いわゆる「ラップ音」とでもいうような奇怪な音まで録音されていました。
さらに一年半前には、突然マンホールが浮き上がり、男子高校生が死亡したという事故が。
こうした怪奇現象の原因をひとつひとつ探っていくことによって、
マリコはひとつの科学的真実に近づいていきます。
ですが、そんなマリコの姿勢に真っ向から異を唱える人物がひとり。
田山涼成さん演じるお寺の住職、義助さんです。
のっけから遺体を前に、「俺が殺した」「天罰をくだしてくださいと願掛けした」
などと不謹慎にも思える発言をしていたこの義助さん。
真実を追及するマリコに対して
「わからねえことをわからねえままにしておく。それが本物の賢さってやつだ」
「なんでも解き明かすのは、愚か者のすることだ」
と言い放ちます。
「わからないことをわからないままにする」――!
そんなこと、マリコの辞書にはありえません。
「なんでも解き明かす」ことこそがマリコの行動原理であり、
そうやって解き明かした真実で人を救う、というのがマリコの信念でもあります。
だからマリコにとって、この義助さんの発言は、ある意味激しいカルチャーショックだったようで。
真逆の価値観を持つふたりの出会いは、いったいどんな「化学反応」を生むのでしょうか。
そしてマリコが最後に解き明かす、前代未聞の「密室トリック」とは――?
前シーズン「耳撃者」で鮮烈なデビューを飾った新進気鋭の匂坂監督が、
今回も趣向を凝らした映像で、不思議な怪奇ミステリーの世界に誘います。
どうぞご期待下さい。
今週の「マリコの衝撃的シーン」
マリコの目の前で仏像が涙を流します。
仏様を泣かせるなんて、マリコさん、いったいどんなキツイことを言ったのでしょうか。
――ということではなく、これはこのお寺に伝わる「七不思議伝説」のひとつ。
ほかにも、「ひとりでに鳴る鐘」「お経の聞こえる井戸」などいくつもの不可思議な現象が起きています。
ですが「不思議ですね」などと素直に関心するマリコさんではありません。
これらの伝説をありがたく信仰する檀家さんたちに対して、
ひとつひとつの「七不思議」を科学的に説明し始めてしまいます。
ポカン顔の檀家さんたちを前に「まあまあ」とマリコを止める宇佐見さん。
12話で兵藤刑事にさんざん言われたマリコの「無粋」っぷりは健在。
空気を読まず、むしろ新しい科学的真実を語る歓びを隠そうともせず、嬉々として語り続けてしまう――
そんな愛すべきマリコ像を、沢口さんが見事なコメディエンヌっぷりで演じたワンシーンです。
第13話こぼれ話
13話、いかがだったでしょうか!?
今回はマリコVS似顔絵捜査官のお話でしたが、このお話ではいつにも増して知らないネタが多く、参加していても勉強になること尽くしでした。
絵心ゼロの私AP上浦には全く未知の領域の「似顔絵」捜査の世界、そして初めて知った「サッチャー錯視」という現象…!
今日のこぼれ話はもちろんこの2つ、「似顔絵」と「サッチャー錯視」のお話です!
似顔絵の描き方
似顔絵は、とにかく目撃者の記憶の鮮度が大事!
住田隆さん演じる佐々木一郎も、仕事があるにも関わらず、マリコさん土門さんによって協力を仰がれ、すぐに似顔絵に協力していましたね。
似顔絵の制作は、まず似顔絵捜査官がチェックシートに沿って次々と質問をしていくところから始まります。
顔の肉付き、輪郭、頭髪の長さ、目の大きさや傾き、眉の太さ、ヒゲの有無など。
この質問に、目撃者はすべて五段階評価(例えば、吊り目、やや吊り目、普通、やや垂れ目、垂れ目、など)で回答していきます。
こういった質問をざっと行って犯人の顔の情報を掴んだ後は、いよいよ似顔絵捜査官が似顔絵を描いていく訳ですが、似顔絵はこんな順番で描いていきます。
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まずは輪郭を描いて・・・
そして髪型。
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次に目を描いて、
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鼻を描いた後に、口を描き、
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最後に顔の印象的だった部分、例えばほくろやヒゲなどを足していくという順番。
この似顔絵捜査官・八幡未知(演・中原果南さん)が描いた、木戸沙也加ちゃん(演・梶原ひかりさん)の似顔絵は、科捜研の背景塗装スタッフ・溝口さんが描いてくださいました。
改めてじっくり見てみても、めっちゃくちゃ似ていますね!
そしてマリコさんの似顔絵がこちら。
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オープニングで何者かが描いていた右の似顔絵も、実はラストシーンで八幡未知さんが描いていたのだろうということが分かったわけですが、本当にそっくりです、マリコさんそのまま「100パーセント」! これも溝口さんが描いてくださいました。
回想で12年前に現役時代の未知が描いていた「本当にうまい似顔絵(by日野所長)」は、助監督玉木さん作。
劇中にこの人物は出てきませんが、とりあえずうまい! 誰かわからないけどめっちゃうまい!
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こんな上手な似顔絵達、滅多に見たことがありませんので感激でした。
描き方の順序は前述の通りですが、そう簡単に描けるようになるものだろうかと不安な方。
似顔絵の上手に描くポイントは、未知いわく「骨格を意識する」ことだそう。
復顔の要領で、骨から肉付けしていくイメージをすれば、マリコさん同様絵心のない!?
人でも描けるようになる、かも知れません!
サッチャー錯視をやってみました
亜美ちゃんの顔写真の説明を使ったサッチャー錯視の説明、かなり驚かれたのではないでしょうか!?
もう一度、劇中で説明に使われた亜美ちゃんの顔写真を見てみると・・・
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うん、やっぱり普通に亜美ちゃんの顔をひっくり返しただけに見えます。かわいいです。
しかしこれを反転させると・・・
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わ!!! 何回見てもびっくりする!!!
劇中でも言っていたように、目と口だけ切り取って逆さまにしているわけですが、まさかこんな顔だったなんて、全く気付きません。
マリコさんが「人の脳は、顔を逆さまから見た時、それぞれのパーツを正しく認識できないそうです。それをサッチャー錯視と言います。」と説明していましたが、この現象、知らなかった方も多いのではないでしょうか!?
このサッチャー錯視が盛り込まれた脚本家・瀧川さんの原稿を読んで、脚本打ち合わせは大盛り上がりでした。
顔にまつわるこんな面白い科学トリックがあったなんて…!
監督もプロデューサー達も、みな逆立ちする勢いで顔を傾け、必死に顔写真を逆さから見ながら打ち合わせをしている光景は、正直「科捜研の女」に参加して以来最もカオスでした。今思い出しても微笑ましくって、楽しい気持ちになります(笑)
この現象は、もともと1980年にヨーク大学の心理教授ピーク・トンプソン氏の報告によって広く知られることになったそうですが、その時に使用した顔写真が、“鉄の女”と呼ばれた当時のイギリス首相マーガレット・サッチャー氏の顔写真だったため、サッチャー錯視という名前がつけられたそうです。
まさか自分の名前がこんなところに命名されるなんて、サッチャーさんも思わなかったでしょうね。
この現象、亜美ちゃんやサッチャーさんだけではなく、もちろん誰の顔写真を使ってももちろん起こりうる現象なわけですが・・・。
私、AP上浦の顔でもやってみました。
(高度な合成技術を持ち合わせていないので即席ですが…!)
こんなところで突然の顔出しです。
初めまして、逆さからすみません。
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逆さからのご挨拶が失礼なのが気になる程度で、まあこんなAPなのかなと思いますよね。
でもこの画像、反転させてみると・・・
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こっわ!!! こわい!! 夢に出そう!!!!
真夜中にお読み頂いている方、おやすみになった後、夢に出たらすみません。
本当の私の顔は、これです。
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こわい加工画像を先に出しておいて、普通の顔を少しでもマシに見せようというイメージ戦略ではありません。
とても真面目に、皆様にサッチャー錯視を体感してもらおうというおもてなしです。
実は初めの反転画像は、この顔写真の目と口だけを切り取って、逆さまにしたものでした。
もっと分かりやすくするために、反転画像を並べてみます。
そのままの顔写真が左、目と口を切り取って、逆さまに貼り付けた怖い顔写真が右です。
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写真を2枚比べてみて、多少の違和感はあれど、そこまでの大きな差はないように見えませんか!?
しかしこの2枚を反転させて比べてみると、
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ぎゃ! ここまで劇的に違う!
こんなにも違う顔でも、逆さにすると脳はうまく認識できないものなのですね。
サッチャー錯視、皆様にも改めて体感していただけましたでしょうか!?
ただただ怖がらせてしまった方、ごめんなさい!
来週は14話!
何やら癖のあるお坊さんがマリコの前に立ちはだかるようで・・・!?
絶対にお見逃しなく!
(文責・東映プロデューサー補 上浦侑奈)