科捜研の女 15
- 春スペシャル2016年4月17日(日)よる9時放送
放送は終了いたしました。ありがとうございました。
■あらすじ
「最も危険なウィルスに対応出来る、最も安全なラボ」という触れ込みの伝染病研究施設をオープン前に視察するマリコ(演・沢口靖子)と宇佐見(演・風間トオル)。地下のレベル4対応エリアで立派な設備に感心しているさなか、緊急事態が発生!宇佐見が男の変死体を発見し、案内していた女性研究員(演・馬渕英俚可)と一緒にその死体ごと解剖室に閉じ込められてしまったのだ。
顔面各部から出血して死んでいる男は、発症したら致死率100%の殺人ウィルスに感染していると言う。ウィルスが変異している可能性もあり、解剖室に閉じ込められた宇佐見だけでなくマリコにも感染のおそれがある。「私たちは誰も外には出られないってことですか」レベル4施設に監禁されたマリコたち。
そして、さらなる衝撃的事実が!感染死体には首を絞められた跡があったのだ。つまり被害者は感染後に何者かに絞殺された!?ということはマリコと一緒に監禁された施設のメンバーの中に殺人犯がいる!!極限状態の中、マリコは殺人犯とバイオハザードに挑む!
(文責・東映プロデューサー 塚田英明)
■みどころ
今回の物語の舞台は「密室」。
マリコ(演・沢口靖子)と宇佐見(演・風間トオル)はオープン前の伝染病研 究施設を視察に行った先で変死体を発見し、監禁されてしまいます。いつもならどんな難事件でも手がかりを科捜研へ持ち帰って鑑定し、真相を解き明かしてしまうマリコ。しかし今回は事件に遭遇するとは思っていなかったので、鑑定道具などを何も持ち合わせていません。いわば丸腰のまま、監禁されてしまうのです。
そして恐ろしいことに、土門刑事(演・内藤剛志)の調べによってこの事件の犯人が、マリコたちと一緒に閉じ込められた5人の中にいるということが分かります。
その5人とは次のとおり。プライドが高くて気も短い当研究施設の所長(演・中丸新将)、上昇志向が強くギラギラした副所長(演・樋口隆則)、いつも笑顔を絶やさない広報局長(演・宮川一朗太)、寡黙に当研究施設の治安を守る警備担当 (演・白井哲也)、そして謎の変死体と宇佐見と共に解剖室の中に閉じ込められてしまった女性研究員(演・馬渕英俚可)。
地下に閉じ込められた彼らは互いに疑心暗鬼にかられて罪のなすり合いまで始める始末。どうやらお互いに何か心当たりでもあるご様子…?
さらに厄介なのはこの変死体。なんと、発症したら致死率100%のウィルスにかかっているというのです。
検視のため変死体に触れてしまった宇佐見と女性研究員はすでに伝染している可能性があり、速くワクチンを接種しなければ命の危険が迫っています。時間がありません。そこでマリコは土門刑事や科捜研のメンバーと連絡を取り合ってワクチンを取り寄せようとするのですが…。
事態は一難去ってまた一難、最後まで気を休ませてくれません。
本作のもう一つのみどころは、宇佐見の活躍ぶりです。
宇佐見と女性研究員は、件のウィルスに感染した恐れがあるということで共に解剖室に閉じ込められてしまいます。
マリコとその他の人たちは、この解剖室の外、研究施設の地下に監禁されている状態。言うなれば宇佐見たちがいるのは密室の中の密室なのです。そんな状況の中で当然怯え始める女性研究員。
しかしそのような状況下においても宇佐見は決して焦りを見せることなく、優しく彼女を励まします。
さらに物語のクライマックスでは、この事件の真相を暴くために宇佐見がある<禁断の行動>に出ます。
そんな彼の紳士的にふるまいと勇気あふれる行動には、胸をキュンとさせる宇佐見ファンも多いはずです。
ウィルスの恐ろしさと宇佐見のかっこよさにハラハラドキドキが止まらない第5話。
今回の「科捜研の女」も期待MAXに ぜひお楽しみください!
(文責・東映プロデューサー補 森田大児)
■こぼれ話
美しく艶やかに書道の世界を描いた第4話、お楽しみいただけましたでしょうか。
今回大活躍した日野所長の部屋に、「書体は人を写す鑑」と書いた掛軸がかかっているのをご存知でしょうか。
筆跡鑑定でその筆跡の主をあぶり出すように、書体で人を見分けることもできる。
あるいは同じ人であっても、その時の気分によって字の大きさや勢いが変わってくることから、書体でその人の「心」を見分けることもできる。
そして、これは「科学」ではありませんが、その人の書く「字」には「その人らしさ」、つまりその人が持っている「性格」が出ているような気がしませんか。
ここで特筆すべきはやはり、今回マリコが書いた「科学」の文字。
実際に沢口靖子さん自身がカメラの前で書いた字です。
均整を保ちながらも、とてものびやかでまっすぐな「科学」――
まさにマリコの、そして沢口靖子さんの人柄を表すような、まっすぐで力強く美しい「科学」の文字でした。
劇中で字を書いていたもう一人の人物といえば、例の掛軸の持ち主である、日野所長。
ホワイトボードに書いた「春眠不覚暁」という字にはどこかあたたかみがありました。
日野所長といえば、2話でもホワイトボードに「赤気」と書いていましたね。
このときは「赤気=オーロラ」の話に興奮しながら書いていたため、字からも情熱があふれ出ていました。
そのような親しみやすい文字を書き、その書体にたがわず温かみのある人柄の日野所長ですが、プロとしての目は鋭い。今作はその鋭さがいかんなく発揮された回でもありましたね。
「アートな書道を筆跡鑑定して」とマリコに無理難題を押し付けられながらも、
「名前を鑑定する」という妙案を思いつくあたり、さすがです。
筆跡をごまかしかねない被験者たちにその意図を悟られないために、
一通り隷書で「春眠不覚暁」と書かせたあとに、
「あ、名前も書いといてくださーい」
といかにも軽く、ついでのように言い放った日野所長の眼光は鋭く光り――なかなかしびれるシーンのひとつです。
そしてもうひとつ、個人的に今作の中で印象深かったのが、「にわか雨」です。
今回のお話では、殺人現場となった義本の家に何人もの人物が行き来します。
まずゴーストライターの蔵間が訪れて、「羽」の文字を書く。
そこに千代子が訪れ、悲しみのなか義本に怒りをぶつけ、去っていく。
そして真犯人・涼香がやってきて、嫉妬とゆがんだ愛にかられて義本を殺害する。
そこに再び千代子が戻ってきて遺体を見つけ、隠蔽工作を行う。
そして最後に作品を受け取りに来たギャラリーのオーナー・美野里がやってきて通報する。
――複雑ですね。
しかも、幾重にも重なる真相を解き明かしていくストーリーライン上、
出来事が時系列順に出てくるわけではありません。
そこで、「千代子が一度目に義本の家から去る間際ににわか雨が降り出す」
という設定を作ろう、ということになりました。
二度目に千代子が来た時にはもう雨はあがっています。
千代子の一度目と二度目の訪問の間の時間帯に「にわか雨」が降っていたという設定です。
同じ「にわか雨」が再び登場するのが、真犯人の涼香が義本と言い争うシーン。
つまり涼香が起した殺人事件は、千代子の一度目と二度目の訪問の間に起こったことになります。
――ということが感覚的にわかりやすくなるのではないか、それが脚本打合せの時に発案されたこの「にわか雨」の狙いでした。
この「にわか雨」、いざ映像になってみると、えもいわれぬ情感を醸し出していることに気付かされます。
着物姿で雨に濡れながら走る、ヒロイン・千代子。
幼馴染に裏切られたという彼女の傷心が、濡れた着物と相まってなんとも美しく描き出されていました。
そして兼﨑監督はこの雨を、ゆがんだ愛に狂った犯人・涼香の「涙」の象徴のようにも撮ってくれました。
降る雨が涼香の涙とシンクロし、殺しへと至る彼女の狂気をより鮮やかに浮かび上がらせていたように思えます。
次回は、しっとりとした今作とはうって変わって、致死率100%の殺人ウイルスと共にマリコと宇佐見が研究施設に閉じ込められてしまうエピソード。1時間ドラマとは思えない濃密なエンターテインメントになっています。ぜひお楽しみに。
(文責・東映プロデューサー 中尾亜由子)