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「あぶない刑事」シリーズを支えた脚本家・柏原寛司氏【独占】インタビュー!<前半>今だから語る『さらば あぶない刑事』製作秘話とは!?

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2016.03.28

現在観客動員数120万人、興行収入15億円を突破し、大ヒット公開中の映画『さらば あぶない刑事』。今回東映公式サイトでは、シリーズ最後を迎えた「あぶない刑事」シリーズで、数多くのテレビドラマ、そして映画全7作品の脚本を担当した柏原寛司氏に、独占インタビューを敢行。終止符を打った今の心境、さらには今だから語ることのできる映画『さらば あぶない刑事』の製作秘話を赤裸々にお話しいただきました。

映画『さらば あぶない刑事』公式サイト

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脚本家・柏原寛司氏

映画『さらば あぶない刑事』は興行収入15億円を超える大ヒットとなっていますが、今の率直な想いをお聞かせください。

最後はうまく締めたな。締められたなと。仲間内の評判もすごく良いですよ。皆に「次はどうするんですか?」と言われるんだけど。こっちが「やりません」と(笑)。良い時にやめといた方が良いので「やりません」と言っています。

今回、これほどヒットすると予想されていましたか?

はじめは、何となく(興収)10億円行けば良いのかなと思っていたけれど、やっていくうちに、もうちょっといくかもしれないなと思いました。公開前から、映画『まだまだあぶない刑事』の時とは、ファンの皆さんの雰囲気が全然違っていたんですよ。待望論がすごくあったので、作品の出来がつまらないと引いちゃうんだけど、上手くいったので、それで勢いがさらについたんじゃないかな。作品を観る前から前売券も売れたわけじゃないですか。それだけファンの皆さんの中で待望論があったみたいですね。

前作から10年という歳月が経っていますが、その間、「あぶない刑事」に対してどういう想いでいらっしゃったのでしょうか。

もう1本やって締めたいなとは密かに思ってたので、勝手に自分でこういうのやりたいなという話は考えていました。それは自分が勝手に考えていたことなので、黒澤さん(制作総指揮:黒澤 満)が実際やるって決断した時からそっちの話は捨てて、また全員揃っての横浜での今回のような話にしようとなりました。

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周囲からも、次回作はいつやるの?という声はあがっていたのでしょうか?

企画立ち上げ当時はそんなになかったんですけど、もう1本やって締めようという雰囲気は、近藤さん(プロデュース:近藤正岳)も含めて、あったんだと思います。だから、近藤さんも、黒澤さんもやる気になったと思うんですよね。

脚本を作るプロセスはどのようなものだったのでしょうか?

始めは近藤さんと作って、準備稿になったところで(柴田)恭兵氏と会って、恭兵氏の意見をいろいろ聞いて、それを入れ込んで。途中から舘(ひろし)さんの意見は近藤さん経由でちょくちょく入ってきました。それを含めて全部入れて、決定稿にしたところで、全員集合になったという感じです。

そういった脚本の作り方は、今までもあったのでしょうか。

いや、初めてですね。やっぱり最後だから気合いが入ったと思うんですよ。話も定年の話だし、最後というのは年齢的にもなんとなく感じるじゃないですか。僕は、一番脚本を書いているとはいえ、テレビシリーズも含め全部書いているわけじゃないけど、役者さんは全部やってるわけだから。舘ひろしは鷹山を全部やってるわけだし、柴田恭兵は大下を全部やってるわけだから。最後だからということで想いをぶつけてきたんじゃないかなと思います。

逆に大変だったことはありますか?

決定稿の後の、直しの打ち合わせですね。脚本を直すのは全然良いんですが、現場の段取りを全部新しく直さなきゃいけないので、それが大変でした。脚本的にも、もっとこうすれば良いというのは色々あったけど、最後だし、俳優さんが「これをやりたい」って言った場合には、(舘・柴田の)2人に気持ちよく演じてもらおうと思いました。

今回の脚本を作る前に、物語上空いている10年間のことを埋める作業はされたのでしょうか。

それは基本的にはしなかったですね。何回も死んでるからね(笑)。また“死ぬ死ぬ詐欺”になるから。変に考えるより、なかったことにした方が良いんだよ。『まだまだあぶない刑事』はほぼなかったことになってるよね(笑)。

10年ぶりということで、タカとユージの描き方を変えようと思った所はありますか?

それはないんですけど、『まだまだ』の時にちょっとやりすぎたなと思ったのは、歳とっているっていうのを強調し過ぎたところ。なので今回は、そこはあえてあまりいじらなかった。定年ということ自体で、歳をとってるというのはわかるわけだから。本人たちが息切れしたりっていうのは現場でやってたけど(笑)、書きこんじゃうと余計やっちゃうでしょ。「やっぱりまだ凄いですね、あんなに駆けて」って、皆が恭兵氏をほめていましたね。舘さんに関しても「あの2人は若いな~、60代には見えないね」と言われていたので、とても成功したと思いますね。

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今回の設定で「退職直前」という大きなテーマがあったと思いますが、そうした意図はどのように考えていたのでしょうか?

ファンの皆さんも、あんまり引っ張られるよりきっちり最後の1本にした方が、気合いの入り方も違うから、これでもう終わりにしようと話をしました。「さらば」というタイトルは、大正解だと思いますよ。終わりにするんだったら、自分の好きな映画でもある『黄色いリボン』みたいな話にしたいなというのがあって。ジョン・ウェインが騎兵隊をやめるって話なんだけど、そういう感じにしようと考えていました。

本作で、南米のマフィアや犯罪としての危険ドラッグなどを題材に選ばれた理由は何かあるのでしょうか。

脚本を書く前年の10月に、ジョンフォードのロケ地のモニュメントバレーっていう所にどうしても行きたかったので、行ったその帰りにロスに寄って、ロスの知り合いに「今一番やばい奴らは誰だ?」って聞いたら、MS13っていうグループが一番やばいと聞いて。他のチームは何かしなければやって来ないけど、MS13は何もしなくてもやってきますから、と。帰ってきて調べたら、本当にやばくて、じゃあそれを敵にしようということで、ほぼ彼らがやっていることをそのまま描いています。だから敵の作り方は結構うまくいったと思います。

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ディーノ・カトウ役の夕輝壽太

テレビシリーズでは、ストーカー犯罪、引きこもりの未成年の犯罪、個人情報の流出など、時事的な事件が多かったと思いますが、その点は意識されていたのでしょうか。

テレビの場合はスケール的にもその手の犯罪でいいのですが、映画だとストーカーと撃ち合いするってのも変だし、ひきこもりの奴と撃ち合いするのも変なので(笑)、相手は銃を平気で持ってるような奴じゃないといけなくなります。それで今回はMS13に。若い奴らが見ると面白いって言うんだけど、一番驚くのは、何で急に銃で撃ったりするんだと、そこは皆驚きますよね(笑)。2人は理屈で説得するタイプでも推理したりするタイプでもないので、そういう相手を選ばないとね。なぜかハーレーに乗ってショットガンで来るしね(笑)。

銀星会のことに触れた台詞や、レパードの登場、退職したパパの奥さんが劇中で初めて登場するなど、細かいネタが散りばめられていたのは、どのように考えたのでしょうか?

「あぶデカ」は一種のホームドラマなので、レギュラーの人たちが何をしているかって結構大事なんですよね。2人が定年ってことは、上の人はほぼ辞めているわけだから。そうすると、パパさんとナカさんが何をしているんだろうという話になるので。パパ(山西道広さん)は本当におでん屋さんをしていたので、近藤さんと店におでんを食べに行きました。そこで撮影させてもらおうと思ってたんだけど、(店を)辞めてお店自体も手放しちゃったんです。閉店の最後の日に行ったり、私たちも努力はしてたんですよ(笑)。

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パパこと吉井 浩一役の山西道広(写真右)

おでんとラーメンというのは珍しくて、「あぶデカ」も変わったなと感じたシーンでした。

おでん屋さんは当初、山西さんの実際のお店での撮影を考えていたので、逆にラーメン屋までもがちゃんとしたお店だと面白くないかなと思いました。ナカさんだから屋台を引っ張ってた方がいいかなと。もともと警察官らしからぬ人だし、普通だとつまらないから。美術とか装飾関係が屋台を派手にしてくれたので、面白かったですね。

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ナカさんこと田中文男役のベンガル(写真奥)

本作でやりたかったけどできなかったこと、もっとこうしたかったという点はありますか?

本当は、刑事を辞めるまでのタイムリミットの話にしてたんです。小説版ではそうしてるんだけど。午前0時になったら刑事じゃなくて一般人になる。それまでにいかに銃を撃つか。それが終わっちゃったら撃てないよっていう話を作っていました。しかし、それだとラストのアクションが夜になります。映画だとデイシーンなので、それができませんでした。それだけちょっともったいなかった気がする。もしタイムリミットの話だったら、0時を過ぎた後、ガルシア(演:吉川晃司)の「もうお前、0時過ぎたから刑事じゃないから俺を撃てないぞ」という台詞のあと、2人が時間を戻して撃っちゃうっていう(笑)。実はそれは、テレビドラマの第1話で丸山さん(脚本:丸山昇一)が書いた少年犯罪の話で、それをもう1回やって締めようと思ってたんですよ。

アクションに関しては、やりきった感じでしょうか。

横浜ではアクションができないので、結構大変でしたね。だから四日市と諏訪に行っちゃったんだけど。以前の映画では長崎へ行って、造船所でやったりしていました。本作では、廃工場の撮影で近県には行ってるけど、関東からあまり離れていません。この30年でアクションシーンの撮影は大分厳しくなったよね。

シートベルトをするのかな?しないのかな?と思って観ていましたが…(笑)

今回はプロデューサーを含めて、ヒットするための仕掛けを脚本作りからこだわっていました。何かしらファンの皆さんに喜んでいただける要素を入れて本当の終わりにしたいなという想いがあったので。レパードはかっこいいですよね。公開初日には、丸の内TOEIの前にレパードが何台も停まってましたし(笑)。今回は、やっぱり日産が協力してくださったのは大きいと思います。(シリーズ途中では違う車に乗ったりもしていましたが)皆さんからすると「何で外車なの?」と思われたかもしれません。本作では仕組みが全部初期に戻ったので、そういうことでも盛り上がっていただけたと思います。日産でも独自の予告編を流したりとか、色々していただいて、日産の宣伝力もプラスになったのではないでしょうか。

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「あぶない刑事」シリーズを支えてきた脚本家・柏原寛司氏。語り出すと尽きないのが、長く続いてきた所以なのだろうか。さて、インタビュー前半では、映画『さらば あぶない刑事』の企画立ち上げから脚本作り、本作の見どころやポイントについてお話しいただきました。

後半では、脚本家だからこそ知る、テレビドラマの秘話、キャストの裏話などが明かされます。インタビュー後半はこちらから!

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映画『さらば あぶない刑事』大ヒット公開中!ぜひ劇場で、タカとユージの活躍をご覧ください!

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