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『ぼくが処刑される未来』スタッフによるトークイベントレポート!

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2012.12.03

12月1日新宿バルト9にて、TOEI HERO NEXT第2弾『ぼくが処刑される未来』スタッフによるトークイベントが行われました。当日は、小中和哉監督、長谷川圭一(脚本)、白倉伸一郎プロデューサーが登壇。高橋一浩プロデューサーの進行のもと、登壇者各自がステージで座るハイチェアを自ら持って登場するなど、アットホームなトークイベントとなりました。

『ぼくが処刑される未来』公式サイト

                      

 

写真キャプション:左から高橋一浩プロデューサー、脚本・長谷川圭一さん、小中和哉監督、白倉伸一郎プロデューサー

 

高橋プロデューサー:

“TOEI HERO NEXT”というブランドを立ち上げた企画趣旨を教えて下さい。


白倉プロデューサー:

「東映特撮ヒーロー作品に出演したキャストのNEXT STAGEを用意したい」というのが大前提ですが、その裏には「新しい映画を作る場を提供したい」という思いがあります。映画の場合、新しい企画を進めるにあたり、「この企画はヒットするのか」を審議するハードルが往々にして非常に高いのです。その結果、冒険が出来ず、成立する企画は同じようなジャンルばかりというのが現状です。 それならば、「一切審議しない」「金は出すけど、口は出さない」という作品作りが出来れば、どんなものが誕生するのかというテストの意味で企画しました。
 

高橋プロデューサー:

僕は“TOEI HERO NEXT”第1弾『PIECE ―記憶の欠片―』と第2弾『ぼくが処刑される未来』を作ったのですが、白倉プロデューサーは冗談抜きで完成した脚本を見せても何もおっしゃらない。それは逆に非常にコワいのです(笑)けれども、若手プロデューサーに新しいことをチャレンジさせてくれるのは非常にありがたいです。
 

小中監督:

これまで円谷プロの仕事が多くて、東映での仕事は初めて。「平成仮面ライダーシリーズ」や「ス―パー戦隊シリーズ」の成功は傍目から見ても素晴らしいものですが、更に手を広げて、特撮ヒーロー作品にはまらない別ジャンルを立ち上げるのは凄いことです。“TOEI HERO NEXT”は、特撮ヒーロー作品のヒットに対するご褒美の企画だと認識していますので、今回長谷川さんから声をかけてもらって参加出来たのはラッキーですし、東映特撮ヒーロー作品の成功の為に苦労してきたスタッフの為にも、何とか作品を成立させないと申し訳ないと思っていました。 5、6年前にオリジナルで長谷川さんが書いた企画を何とか小説やシナリオに成立させようと、僕も手伝っていたけれども実現しなかった。それらの企画のひとつが、今回“TOEI HERO NEXT”で実を結んだのは、今の東映に勢いがあるからだと思います。
 

長谷川さん:

このオファーをいただいた時は、丁度『マジすか学園3』のメインライターの仕事が大変で疲弊していたんです。そこへ高橋プロデューサーから「自由に書いていただいて結構です」と電話がきたものだから、最初は冗談かと思いましたが、そんな機会は今後ないとやることにしました。 当初はお化けの見える女の子のラブコメディというプロットだったのですが、上手くいかず…。「自由に書いてよい」というのは意外と大変なんですね。結局、以前書いたものから選ばれたのが今回のものです。まさか以前書いたものがここで実現するとは夢にも思いませんでしたから、ピンチから奇跡が生まれることもあるんだと実感しました。
 

高橋プロデューサー:

正確には、最初『デッド・ゾーン』(1979年、スティーヴン・キングの小説/1983年、デヴィッド・クローネンバーグ監督により映画化)をモチーフに若者向けに落とし込む話が出来ないかと相談したんです。その後、長谷川さんの嗜好もあり、『メメント』(2000年、クリストファー・ノーラン監督)『バタフライ・エフェクト』(2005年、エリック・ブレス、J・マッキ―・グラバー監督)『アイデンティティ』(2003年、ジェームズ・マンゴールド監督)のような、時間が繰り返され、作品の世界観が倒錯したようなテイストにへと変わっていきました。そこが、現在と未来が交錯する構成である、本作のモチーフに繋がるわけです。でも、実際に“25年後の未来”を描くにはどうすればいいんだと我々が悩んでいたところに、小中監督が救世主として参加してくださいました。
 

小中監督:

長谷川さんの小説やオリジナル脚本は、『マイノリティ・リポート』(フィリップ・K・ディックの小説/2002年、スティーブン・スピルバーグ監督により映画化)ばりに壮大な未来世界のイメージが描かれていましたが、今回のスキームでそのまま描くのは難しい。ですから、幸雄の成長ドラマとして集約し、そこに登場する未来世界は何だろうと考えていきました。リアルな未来を見せるのは無理だが、量子コンピュータ“アマテラス”という国民管理システムに支配された世界が未来だと観客に伝わればそれでよしとする、一点豪華主義で乗り切りました。極論すると、空中に“アマテラス”が浮いていれば未来で、浮いてなければ現代という…。未来を表現する工夫は、他には色味をおさえた衣裳ですね。エキストラの方へも、事前に「ダークカラーの洋服を着用」とアナウンスをしましたし、仕上げではカラートーンも調整しました。現実的には今の洋服であっても、印象として違いを感じてもらえればと思っています。
 

白倉プロデューサー:

幸雄が脱出する時に乗る軽トラックが、「キュイーン」とカッコいい音を出して走るくせに、練馬ナンバーなのが最高でした(笑)


小中監督:

あれは大泉の東映東京撮影所にある美術部のトラックです(笑)『TIME』(2011年、アンドリュー・二コル監督)では70年代のクラシックカーをわざわざ登場させて、未来的な効果音をつけるという見せ方をしているんですが、我々は美術の平トラですけれど、効果音だけは参考にさせてもらいました(笑)
 

白倉プロデューサー:

25年後は、練馬ナンバーの平トラが最先端の車として人気を博しているかもしれませんよ(笑)
 

高橋プロデューサー:

今年は特撮劇場版5作品、“TOEI HERO NEXT”2作品、同時にテレビやネット配信もあり、スタッフの皆さまの健康が心配です。来年もこのペースで製作されるのでしょうか?という質問がTwitterに来ました。
 

白倉プロデューサー:

もちろんスタッフの健康は心配ですが(笑)、この不景気なご時世に仕事はあるだけありがたい!むしろ我々の仕事は、仕事を増やしていくことだと思っています。作品数は減るわ、制作費は減るわで、撮影現場は厳しい状況です。特撮に限らず、仕事を増やしていくのが私のテーマですから、来年はこのペースどころか、もっと増やします!(拍手)
 

観客との質疑応答

Q.限られた予算で良い作品を作るコツは?

小中監督:

今回は東映東京撮影所作品ということで、限られた予算と言えども、まだ映画的な作り方をさせてもらいました。ですから、撮影所の底力のお蔭で、同じ予算でも町場の制作チームで作るよりもずっといい絵が撮れています。今回の僕のテーマが、この予算内で映画らしい作品を作れることを実証するということでした。制作費をかけた大作はディテールに凝りますが、低予算の作品は一点突き抜けてメッセージが伝えられれば、制作費の高い安いは関係なく、観客の満足度は得られるのではないか。僕はそう心がけています。
 

高橋プロデューサー:

今回の映画では、制作費が限られる分、人に負担がかかりました。Twitterでは“この作品は愛で出来ています”とつぶやいていますが、スタッフが採算度外視し、寝る時間も惜しんで小中監督が目指すイメージに向けて協力してくれたからこそ、この作品は成立したんだと思います。
 

小中監督:

スタッフにはいつも「次はもっといい条件で」と言いながら、皆に「ウソ、もっとキツくなったよ」と言われるんですが、「面白いからやろうよ」と賛同してくれるスタッフがいるからこそ、予算的には不可能でも「やっちゃおうか!」というノリが現場に生まれるんですね。
 

Q.モバイルやPC画面が六角形だったのは何か意味がありますか?

小中監督:

未来世界を表現するのに、“アマテラス”の端末やモニターなど、六角形にはこだわってみました。限られた予算で未来の世界観を表すのに効率的と思い、美術部スタッフに頑張ってもらいました。六角形が、管理社会をグラフィカルなイメージとして統一感を出せればという狙いです。
 

Q.今回の映画は、“25年前の自分に会う”のがテーマとなっていますが、もし過去の自分に会えるとしたら、いつの時代の自分にどんなことを伝えたいですか?

長谷川さん:

飲み過ぎて失敗する前の自分に会って、注意したいですね(笑)常に意識しているはずなのに、何度も失敗してしまう。
 

高橋さん:

因みにどんな失敗を?
 

長谷川さん:

それは言いたくありません(笑)
 

白倉プロデューサー:

まず、どの時点であっても過去の自分には会いたくありませんが、「お前、もう少し何とかしろよ」と言いたいです。学生時代の自分に会えば、「もっと勉強しろよ」と言いたい。当時そこそこ消化していたつもりですが、もっと本を読んだり、映画を観たりした方がいいよと。
 

小中監督:

初日舞台挨拶の時に、登壇するキャストにお手紙を書く必要があり、25年前の自分というテーマで考えてみたんです。僕の場合、丁度25年前は24歳で、『四月怪談』という作品で監督デビューした頃だったんです。当時、プロデューサーからパンフレットに「初心忘るべからず」という言葉を贈られたのを思い出し、福士蒼汰さんの手紙に引用させてもらいました。やりたいことは常に変わらず現在まで来ているので、自分としては25年間変わっていないつもりですが、25年前の自分に対して、「初心忘るべからず、そのまま頑張れや」と言ってあげたいです。
 

高橋プロデューサー:

それでは最後にメッセージをお願いします。
 

白倉プロデューサー:

東映は、バラエティに富んだ作品を製作するのが社是としてきた会社ですが、最近その振り幅が狭くなってはいないかという危機感から、この“TOEI HERO NEXT”を企画しました。今後も“TOEI HERO NEXT”第3弾、第4弾を連打し、来年も様々な作品を仕掛けていきたいと思っています。スタッフの健康も心配ですが、死なない程度にスタッフ全員で頑張ります(笑)
 

長谷川さん:

直接観客の皆さんと会えるのが映画の醍醐味です。テレビももちろん魅力的ですが、映画もいいものだと改めて思いました。また機会があれば嬉しいです。
 

小中監督:

ほぼSFファンタジー系作品にこだわって25年間監督をやってきましたが、“TOEI HERO NEXT”はオリジナルのSFファンタジー系作品が出来る、非常に貴重な場だと思います。是非、ずっと続いて欲しいし、また撮らせていただければと思います。「平成仮面ライダーシリーズ」や「ス―パー戦隊シリーズ」の枠を超え、SFファンタジー系作品が元気になっていくように、自分も力を尽くしたいし、観客の皆さんにも盛り上げていただきたい。その第一歩がこの“TOEI HERO NEXT”ですから、皆さん、宜しくお願いします。

 

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