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悼む人

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公開終了

あなたは思い出す。誰に愛され、誰を愛していたか。
70万部突破の2008年直木賞受賞作が遂に映画化!

イントロダクション

ベストセラー作家・天童荒太の直木賞受賞作『悼む人』を堤 幸彦が映画化。

亡くなった人が生前「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか」。そのことを覚えておくという行為を、巡礼のように続ける主人公“悼む人”こと坂築静人と、彼とのふれ合いをきっかけに「生」と「死」について深く向き合っていく人々の姿を描いた小説に堤は心打たれ、映画化の前に舞台化を行うほど、この作品に思い入れを見せる。

天童が『悼む人』を書くに至った発端は、2001年、9.11アメリカ同時多発テロ事件、およびそれに対する報復攻撃で多くの死者が出たことだった。これらの悲劇だけではなく、世界は不条理な死に満ちあふれていることに改めて無力感をおぼえた天童に、天啓のように死者を悼んで旅する人の着想が生まれた。彼は実際に各地で亡くなった人を悼んで歩き、悼みの日記を三年にわたって記し、その体験を元に2008年、『悼む人』を刊行した。そして2011年、日本は再び大震災に見舞われ、我々は改めて不条理な死と向き合う事を余儀なくされた。

人はなぜ生まれ、なぜ死ぬのか。ふいに目の前から消えてしまった者に対して誰もが抱く行き場のない思いをどうしたらいいのか。病や事故のような逃れようのないことであれ、殺人という加害者によることであれ、かけがえのない「生」を損なわれた時、人は深く傷つき、苦しむ。静人は旅をしながら、「生」を奪い奪われる人たちと出会っていく。母を見殺しにした父を憎む男。愛という執着に囚われて夫を殺した女。末期癌療養に病院ではなく自宅を選ぶ母親…。静人自身も、大好きだった者の死を忘れるという行為に自らを責め続けていた。「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか」死者に対してこの3つを見つめ、記憶することで、逃れることのできない「死」を、「愛」によって永遠の「生」に変える。これが、人のできる最善なのではないか。静人の〈悼む〉行為はそう語りかけてくるようだ。
その「愛」の記憶は、見た人の数だけ無数にある。静人が黙々と死者を訪ね歩き、その愛の記憶をひもとき、呪文のように言葉にし、祈る姿を見ながら、観客は個々の「愛の記憶」を呼び起こしていく。そして、自分は誰を、どんなふうに愛し、誰かに、どんなふうに愛されたであろうか。また、これから誰を愛していくだろうか。そんな思いにも繋がっていく。
「生」と「死」と「愛」。
人間の根源的な営みに真っすぐ向き合った作品を、堤 幸彦は「これがデビュー作」という強い思いで挑んだ。エンターテインメント作品を多く生み出す一方で、近年、『MY HOUSE』『くちづけ』『Kesennuma,Voices.』 シリーズなど現代日本の問題を取り上げた作品も撮っている堤の現時点での到達点が『悼む人』である。笑いやトリッキーな演出は抑制し、登場人物の繊細な情感や、移り変わる日本の風景を静かに映し出す。

この作品のために実力派俳優が集結した。出会う人たちの「死生観」のリトマス試験紙のような静人に高良健吾。夫を殺した罪に苛まれ続ける女・倖世に石田ゆり子。彼女を追いつめる夫の亡霊を井浦新、新たな命を授かる静人の妹を貫地谷しほり、生からも死からも目を背け偽悪的にふるまい続ける雑誌記者に椎名桔平。最後まで死と闘い続ける母・巡子に大竹しのぶ、ほか盤石なキャスティングだ。
〈悼む〉という人間のでき得る限りの行いとその涯にある救済を、堤が身を切るようにして見つめ続けた世界を、熊谷育美の主題歌「旅路」が包み込む。その時、観客の心には一筋の光が差し込んでくるだろう。

ストーリー

坂築静人(高良健吾)は、不慮の死を遂げた人々を〈悼む〉ため、日本全国を旅している。〈悼む〉とは、亡くなった人の「愛」にまつわる記憶を心に刻みつけることだ。死者が生前「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されていたか、その生きている姿を覚えておく」ための静人なりの儀式は、傍からは奇異に映った。だが、この行為こそが、静人と関わった様々な人たちの「生」と「愛」に対する考え方に大きな影響をもたらし、誰もが抱える生きる苦しみに光を照らしていく。

山形のとある事故現場で静人に出会った、雑誌記者・蒔野抗太郎(椎名桔平)には、余命幾ばくもない父親(上篠恒彦)がいるが、子供の頃からの確執によって、袂を分かったままだった。偽悪的なゴシップ記事を書き続け“エグノ”と揶揄される蒔野は、静人に目をつけ、取材をはじめる。
同じく山形。産業廃棄物処理場を埋め立てた展望公園で、静人と出会った奈義倖世(石田ゆり子)は、夫・甲水朔也(井浦新)をその手で殺した過去をもっていた。夫の亡霊に苦しむ倖世は、救いを求めて、静人の旅に同行する。
横浜にある静人の実家では、母・巡子(大竹しのぶ)が末期癌と闘っていた。折しも、妹・美汐(貫地谷しほり)は妊娠しているにもかかわらず、恋人に別れを切り出されてしまう。破談の理由には、静人の「悼む」行為への偏見も含まれていた。傷つき、苦悩しながら、それでも前を向こうとする母娘。ふたりを支えるのは、父・鷹彦(平田満)と従兄弟の福埜怜司(山本裕典)。彼らは、旅に出たまま帰ってこない静人のことも心配している。
謎の旅人と化している静人の身辺取材をはじめた蒔野は、その途中、父の愛人・理々子(秋山菜津子)から父の死の報を受ける。葬式に顔を出した蒔野は、見ないようにしていた父の思いに触れ、動揺する。その矢先、これまでの悪行のつけがまわったかのように、命を狙われるはめに陥ってしまう。
一命を取り留めたものの視力を失った蒔野は、静人の実家を訪れる。そこで、巡子から明かされる、静人の〈悼む〉行為に秘められた真実。過去の出来事をひとり抱える息子に対して、巡子の願いはただひとつ、「誰かを愛してほしい」ということだった。
〈愛〉を封印しひたむきに〈悼み〉続ける静人によって、死者とその関係者たちにまつわる知られざる愛の真実が浮き上がっていく。
旅をするうち、静人と倖世は互いに心惹かれはじめるが、静人も倖世も、それぞれが過去に背負った罪の意識から、素直に人を愛することができない。
「誰かを愛してほしい」という母の願いは静人に届くのか。ひたひたと巡子の死期が近づいてくる。怜司は、静人を“悼む人”と呼ぶ情報サイトから、静人にメッセージを発信する。その時、静人と倖世のとった行動は…。

静人、そして彼を巡る人々は、罪から解放され、生きる意味と、真実の愛をみつけることができるのだろうか。

キャスト・スタッフ

監督  堤 幸彦
原作  天童荒太 「悼む人」(文春文庫刊)
出演  高良健吾 石田ゆり子 井浦 新 貫地谷しほり 椎名桔平 / 大竹しのぶ
脚本  大森寿美男
音楽  中島ノブユキ

PG-15

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