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撮影所マイスター対談 『渡瀬恒彦さんと東映京都撮影所』

ロケで見ている人から一番多く掛かる声が「おみやさん!」


「おみやさん」人気シリーズとしての魅力

「おみやさん」

渡瀬)「おみやさん」シーズン1で、姉妹の話で、少し知的障害がある妹にお姉さんが千羽鶴を教えるシーン。ある日、彼女たちの部屋のセットに入ると、千羽鶴が山のように作ってある。貧しいという設定だったから、新聞紙とかチラシとかで折った鶴だった。装飾の岩花と美術のスタッフが一つ一つ折ったものです。そうしたら監督の吉田啓一郎が「千羽鶴をアップで撮ろう」となった。それだけで“ゆすぶられる”というか。そうしたスタッフ・キャストの思いが観ている人の心の中に積み重なっているのだと思います。

奈村)「おみやさん」の原作は京都が舞台ではありません。それを“ウエットな京都”で、ハードボイルドではなく、人情味溢れるドラマに仕立てて、京都にピシッとはまるように渡瀬さんやプロデューサーや皆さんで考え抜いた。こうしたことが長続きした一つの要因でしょう。

渡瀬)「おみやさん」でいうと、“鳥居”と“洋子”が鴨川縁を歩くシーンが毎回出てきます。これを東京でとなると神宮の銀杏並木かな。ちょっと違うんですよね。また撮影条件でいうと、今の京都は寒くて厳しい。でも季節が一番画に出るのは京都なんですよ。それも雪があったり、風が吹いたりする今の季節。夏、汗をかくのも我慢ですが、これは画にならないんです。我慢をして値打ちのある、効果が出るのは、寒い時の京都だと思いますね。それとロケやっていて、見ている人から一番多く声を掛けられるのが「おみやさん!」なんです。

奈村)吉田さんと最初に会われたのは、「タクシードライバー※」からですか。「おみやさん」は8年、タクシードライバーは18年と伺いました。両作品とも高視聴率をキープしているすごい番組です。(※「土曜ワイド劇場 タクシードライバーの推理日誌」(1992年~、テレビ朝日))

-演じる際に注意していることはありますか?-

渡瀬)「おみやさん」に関しては、シリーズ7作目を迎え、俳優としてはある意味出来上がっていて、プロデューサー諸氏によって持ち込まれる脚本が勝負です。ただ現場でいろんなアイデアが出たら、僕はやった方がいいと思っています。それを監督が選ぶかどうかは別としてね。“とりあえずやってみよう”というのが現場での流儀でしょうか。実際にやってみて新たにかみ合ってくることもあるし、その方が現場も面白くなる。

奈村)恐らく渡瀬さんも若い頃、深作さんに「これやらせろ!」って無理難題を言っていたと思うよ(笑)。

渡瀬)それで思い出したんだけど、作さんの『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(1994年)を撮った時、広場に詰めていて不振な音がして飛び出して行くシーン。その上雨が降っていて高いところから飛び降りるカットだった。テスト終了後、作さんが「おい、渡瀬、お前下見ただろうっ」て。考えたら当たり前だよね(笑)。普通下見るだろ。監督も言った瞬間に「あっ!」て思ったんだ。「当たり前だけど、でも映ったら気持ちが悪い」って。いざ本番となったら、ザーザーの“雨降らし”。そんな中じゃ下を見ているかどうかなんて分かりゃしないって(笑)。でも見ないで飛び降りたよ。

奈村)役者さんと監督さんがうまくかみ合った時、思った以上のパワーを発揮する。深作さんが最初にここに来られたのは40代前半、渡瀬さんは20代後半。あの年代、“これをやらせろよ”“やるんだ”というパワーがぶつかり合い、良い作品を生み出していた。

渡瀬)確かにあの年代でお互いに出会ってないとできなかったな。



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