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撮影所マイスター対談 『渡瀬恒彦さんと東映京都撮影所』

撮影所って“人間の体”みたいになっていると思うんです


京都撮影所は“本来の撮影所”としての姿を成している唯一の撮影所(渡瀬)
実は私が“表”の所長で、“裏”の所長は渡瀬さんなんですよ(笑)(奈村)

奈村 協 京都撮影所長

-ところで京都での遊びなどは?-

奈村)昔はすごかったですよ。撮影終わった後はね。今は散歩ですけど(笑)。

渡瀬)嵐山の辺りをね。

奈村)皆さん集まると、じゃんけんして、負けたら一杯飲むというゲームを一緒にやっていた。氷を入れるアイスペールにウイスキーを一本入れるんです。じゃんけんして負けた奴が順番に飲んでいくんです。それを何度も繰り返す。そりゃ誰か倒れますよ。その当時カラオケもなくて、とにかく皆と遊ぶのが好きだったんですね。一方では、渡瀬さんは高麗人参を飲みすぎて入院したなんてことがありましたね。

渡瀬)工藤さんの映画で『服部半蔵 影の軍団』(1980年)をやった時、風邪を引いてものすごく調子が悪かった。緒形拳さんが敵役で出演されていて、緒形さんが“元気だぞ!”っていう調子でセットに入ってきて、これに対抗するには何とかしなきゃいけないと思った。演技課の山下さんに「にんにくを焼いて」と頼んで、一塊ね、ちょっと多いなと思いながら食べていた。そうしたら、あるスタッフが高麗人参のエキス、どろどろのやつが効くからといって持ってきた。箱を開けたら、耳掻きみたいのが付いていた。それが1回の定量なんだよね。でもそんなもんで効くとは思えなかったから全部飲んじゃった。翌朝起きて鏡を見たら、「あっ目に力が出てきた」と思った。撮影所に行くと昼ぐらいからお腹が痛くなって、でもなんとか頑張って、終わって控え室に帰ったらトイレに直行だよ。吐き気と下痢が止まらなくて何度もトイレ行き、近くの病院に行ったら「赤痢じゃないか」となった。そんなことはないって、俺は一人じゃ飯を食わないからね。そのうちにふっーと意識が飛んで、気付いたら別の病院のベッドにいた。そこの先生に「どこで何を食べたんですか」とあれこれ質問されるうちに、「あっ高麗人参だ」となった。

奈村)当時の監督とかには、にんにく信奉があったんです。深作さんもにんにくエキスをよく飲んでいましたね。各ルームにもありましたし。

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渡瀬)作さん(深作監督)と『仁義なき戦い』の時かな。車に引きずられながらピストルで撃たれるシーンを三条通りでやって、終わってルームで飲んでいたら、作さんに呼ばれた。なぜか急に作さんが笑い出すんだよね。「フィルムが入ってなかった」って(笑)。何て言っていいかわからなくて、そりゃあ笑うしかないよ。

奈村)私も深作組で、大映通りでのパチンコ店の銃撃シーン。深夜までやって大苦情のなか撮影を終えました。この時もフィルムが入ってなかった(笑)。「また行くのかよ」って。渡瀬さんの時は、そのシーンをもう1回やったんですよね。

渡瀬)やったよ(笑)。でも作さん、中島さんは、いわゆるスターではない人間に対して注ぐ愛情は多かった。だから二人の仕事の時には、より燃えるというのはありましたね。何より現場に熱気がありました。

奈村)渡瀬さんって、厳しい部分と優しい部分があってキャパが大きいんです。だからいろんな人が頼りにする。「おみさやん」も今度でシリーズ7作目になりますが、レギュラー出演者がほとんど変わっていない。そういう意味では映像作りが“チームで作る”という感覚を、若い頃から持っていらしたと思います。

渡瀬)ベタで京都に居続けているわけじゃないので、撮影所へ帰ってきてスタッフの中に若いのがいると、すごく嬉しいんですよ。「おみやさん」でも、シリーズ中に武中っていうのが照明技師になった。東田もそうだし。今回は湯川がカメラマンになっているし。そういう人達が育ってきて、その下にまた元気な奴が入ってくる。撮影所が“活性化している”という印象を持ちます。東映の京都撮影所が、“本来の撮影所”としての姿を成している“唯一の撮影所”だと思っています。更にそこが稼動しているという現実がうれしい。

奈村)実は私が“表”の所長で、“裏”の所長は渡瀬さんなんですよ(笑)。確かに撮影所は器ではなくて、“人とか技術”に支えられています。

渡瀬)撮影所って“人間の体”みたいになっていると思うんです。要するに頭を使わなくてはならない人はいるわけだし、目を使う、耳を使う人がいる。そして手や足も…。そういういろんなパーツで成り立っていると思うんです。



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