“魂”は世代を超えて伝達する!~『ヤマト』、そして『プリキュア』へ~
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予算と時間に制約のあるテレビアニメーションの現場で、実写で培われた“映画ための要領”と、“絶えず面白い作品を作ろうとする探究心”が、アニメーター達の心に火をつけ、他に比類ない“アクションアニメ”が生み出されてきました。人材の坩堝(るつぼ)のようなアニメの現場に植えつけられた活動屋魂は、当時も現在も、様々なクリエイターたちに影響を与え続けています。 |

勝間田) 要は吸収力だからね。実写のノウハウを彼らがどう覚え、こちらがどう絵の演出を覚えるかということなんだけれど、僕なんかは絵は描けないんだよな、そこが違う。だから最終的な演出はアニメーターがやったほうがいいんじゃないかな。絵描きの演出力がある人がね。絵が決定的だからね。
今はDVDで映像がこれだけ出ていて、実写の研究をしている若手もいるけど、当時はアニメしかやっていない演出家なんか、下手なんだよねえ、実写のことが分からないから。だから宮さんなんかは、いいときに東映動画にいたんじゃないかと思う。京都から我々のような実写の経験を持った人間がきたことで、いろいろなものをうまく吸収できたんじゃないか。もちろん能力はあったんだけど、あの人材交流は大きかったんだろうね。 特に編集は決定的だったと思う。僕らと同時期に、千蔵豊っていう編集マンが来たんだけどね、彼が入れた編集の呼吸が映画には大きかったね。
僕なんかそうやって、実写のノウハウをアニメに入れていったんだけど、当時いっしょにやってた石ノ森章太郎さんなんかは、僕はマンガの構図やコマ割りは実写を参考にしてます、なんて言ってたりしたね。
そのうち、実写がアニメをマネするようになったりもしたね。『ヤマト』で一緒にやった舛田利雄さんの『源義経』(1990 TV)でね、那須与一が弓引いて、パッと弓を離すと、次にポンって矢が刺さって揺れてる画がくるのが実写なんだけど、その矢をフォローさせてたのね。あれはそれまでの実写ではなかった、アニメのマネなんじゃないかと思うんだ。今、実写もだいぶアニメの影響が大きいよね。

「デビルマン」
DVD全3巻発売中
各10,290円(税込)
発売元:東映ビデオ
勝間田) 『サイボーグ009』(劇場版1966/1967 テレビシリーズ1968)は石ノ森さんの漫画原作が先にあったけど、前の『海賊王子』(1966)はそのスタイル。石ノ森さんとは「リュウの道」のパイロットのシノプシスを書いてもらったりね(放映時タイトル『原始少年リュウ』(1971-72))。『デビルマン』でも、(永井)豪ちゃんと「魔王ダンテ」参考に作ったり、ロボットものもほとんど、キャラも変身なんかも豪ちゃんに考えてもらったんだ。
『宇宙戦艦ヤマト』は、松本零士さんとの作品だね。『さらば』のときの盛り上がりはすごかったね。公開前夜の2時に、ラジオの「オールナイト・ニッポン」に出演しててね、4時ごろ終わったんで、ちょっと劇場覗きに行ってみよう、って行ったら真っ暗な劇場の前に、蟻んこの頭みたいな黒いのがうわっーと取り巻いてて、あれみんなお客さんだよ!って驚いたな。
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生粋の京都の活動屋。勝間田さんのエネルギッシュな言葉の端々に、映画黄金期を支え、アニメ黎明期を築いた人々の、熱い姿が浮かんできます。 そんな勝間田さんが、現在、若手スタッフと一緒に取り組んでいるのが『ハートキャッチプリキュア!』(第六話 演出)。意外!?いえいえ、彼女たちの凛々しい立ち姿を見てください。その雄姿、そのポージングは、時代劇スターが見せていた“見栄”そのもの。太秦の地から受け継がれた活劇の魂は、今も尚、アニメーションの中で生き続けています。 |
『プリキュア』も剣戟アクションなんだけどね、ただあれは女の子だから、あんまり徹底的に敵をやっつけちゃいけないっていうのが、僕には難しい(笑)。『キューティー・ハニー』(1973-74)やってたからさ、こないだそのつもりで、敵をバーンとやっつけるところで「おい、これパンツ見えてもいいだろ」って言ったら「いえ、プリキュアはパンツ見えたら駄目なんです」って言われちゃった(笑)。
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ハートキャッチプリキュア スタッフルームにて |
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©ダイナミック企画・東映アニメーション
©ABC・東映アニメーション
【目次】
- 勝間田具治監督登場!『タイガーマスク』『マジンガーZ』・・ヒーローの誕生の影にこの男あり!(1/4)
- 映画黄金時代の京都太秦撮影所、そしてアニメの世界へ(2/4)
- 【異分子】との衝突(クラッシュ)がアニメーションを活性化する!(3/4)
- “魂”は世代を超えて伝達する!~『ヤマト』、そして『プリキュア』へ~(4/4)