東映ホーム > 東映マイスター > vol6鈴木常務「東映特撮番組」を語る “戦隊シリーズ”1700本へ

東映特撮番組を語る!

“戦隊シリーズ”1700本へ

“戦隊ヒーロー” は、世界的には“特殊なヒーロー”

秘密戦隊ゴレンジャー

“グループヒーロー”ものというジャンルは、世界中見回しても余り見当たりません。“戦隊シリーズ”はアメリカに行って『パワーレンジャー』になりましたが、その際アメリカの担当者に、「何でヒーローが5人もいるのだ」と聞かれました。アメリカ人からすればヒーローは一人。キリスト教の神は一人であるということも何処か影響しているのかもしれません。『スーパーマン』『スパイダーマン』『バットマン』にしても一人です。それが5人で力を合わせるなんて・・・・。彼等にとって複数のヒーローは、当時不思議に見えたのでしょう。戦隊ヒーローは「知恵」と「力」と「勇気」そして「友情」を大切なテーマにして描き続けていることを説明し、特に「友情」「力を合わせる」にはグループでないと表現できないと言うと「それは面白い」とのってくれました・・・彼らにとっては、ヒーローになんで友情が必要なのだという疑問は残っていたようですが。
当たり前に感じていた戦隊ものは、世界的に見ると、意外と“特殊なヒーロー”だったようですね。そんな特殊性が、結果アメリカで大ヒットし、世界中でグループヒーローの戦隊が認知され、17年も続いた訳です。“他とは違うもの”、“今まで見たことのないもの”を常に心掛け、クオリティーの高い作品を創っていくことが、キャラクター作品を長く続けて行く上で、一番大切であることを改めて教えて貰いましたね。

“カラフルカラー”によるキャラクター設定と不動のレッド

電子戦隊デンジマン

“パワーレンジャー”を作るときに、ロスのスタッフに聞かれましたが、何でこんなに派手な色を使うのかと、それも原色の5色でと。渋い色の多いヒーローの中で、確かに目立ちます。戦うときには命がけだが、その最中でも結構余裕を見せて軽いところも見せるのが戦隊キャラの特長。軽い怪獣とのやりとりには、原色の5色のヒーロースーツが良く似合うのですよ、と言うとグッドアイデアだと共感してくれ、親しみやすいと感じてくれましたね。  
34年間も戦隊シリーズの制作を続けていくなかで、5人の色の組み合わせは変わりましたが、一つだけ変わっていないのは、センターの“レッド”です。他のメンバーは黒や緑や白などが交替して入っています。「何で赤なの?」とよく聞かれますが、以前生命保険会社が子供たちの好きな色を調べたら、男女共に“赤”がダントツにトップでした。遠くからでも一番良く見える“視認性”に富む色で、交通信号でも止まれを知らせる色は“赤”。大自然の中では、赤は少なく大変良く目立つ。それで脇の色を変えても、センターに立つ“レッド”は絶対に変えないで来たのです。男の子も女の子も赤色には“燃える男のレッド”をビビッと感じてくれているようです。ヒーローの人数や構成に関して言えば、あるとき女性を一人から二人に増やすことを提案したことがあって、「女の子はアクションものを見ないし、お母さんが武器のおもちゃを買ってくれないから、男5人にした方が良い」と言った意見もありましたが、「でもそれではドラマにならない。女性一人だとドラマが薄いし、女性が刺身のツマになってしまうのでは」と、必死で説得した記憶があります。実際、女性を二人にすると女性同士の芝居も作れるし、ドラマのスケールが大きくなりますからね。当時、小さなファンからの手紙で「どうしてレッドがピンクのピンチを助けて、ピンクがレッドを助けることがないのか。たまにはピンクがやって欲しい」と。ああ女の子も強くなったなって(笑)。認識が甘かったですね。少し考え方を変えなくてはいけないと思ったのも、女性を増やした理由です。男の子には銃や剣のオモチャ=なりきりセットがありますが、お母さんは女のお子さんには武器を買ってあげません。女の子をお持ちのご家庭では、『プリキュア』を買ってくださいということですね(笑)。

太陽戦隊サンバルカン

キャラクターの性格については、色が与えるイメージも強調しています。例えば“ブラック”は些かニヒルで、戦いが強いという感じですね。「黒なんて子供が好まないから売れない」と言われましたが、思い切って出してみたら売れました。強いヒーローに憧れる子供たちは、引き締まった黒の強さに痺れたようです。でも毎年“ブラック”を出さないようにして、グリーンやブルーとチェンジして、常に新しい戦隊を模索しています。色の作業は楽しい作業ですが、例えば“ピンク”の場合で言えば、FRPのヘルメット、革靴、スーツなど素材が違うので、同じ色が全く出せないというハードルの高さに悩ませられます。また地方によって色の感覚も変わり、関西と関東と東北のピンクが違うのでどの地方の好みを選ぶかが難しいですね。グリーンは東北地方では“東北新幹線”の色が好まれています。色決めはキャラ設定に大きく影響してきますので、結構難航しますね。ブラックを出すときはグリーンを避けます。寒色系で組むと全体の印象が暗くなってしまうため、毎年バランスをとりながら採用していますよ。  
こうした色決めにはいろいろな業界で興味があるようで、以前「SONY」の「BRAVIA」からも取材を受けましたが、不思議な色使いをしているヒーローであることは間違いなさそうです。

巨大ロボの登場

侍合体DXシンケンオー(発売元:バンダイ)

スーパー戦隊といえば人気のオモチャは巨大ロボットですが、シリーズの最初から登場していたわけではなく“バトルフィーバーJ”からでした。シリーズの方向性、広がりを検討する中で、年齢が上がって来た作品を、キチンと子供たちに取り戻すには何かとの問いかけに、好きなものはやはり「ロボット」、それも「巨大ロボット」ではないか、となり巨大ロボットのシリーズ初登場となりました。当時から巨大ロボットは人気がありましたが、市場には今のような複雑なロボットのおもちゃは少ない時代でした。“バトルフィーバーJ”のロボットは巨大戦艦の中から出てくるだけの単純なもので、合体するものではありませんでした。翌年の“デンジマン”では変形はしますが合体は出来ません。“サンバルカン”でやっと3人のヒーローの操縦で3台の合体と行きたいところでしたが、“2台が合体”するところまででした。その後、5台合体になるには、オモチャの担当を急かしましたが、6年後の“マスクマン”まで待つこととなります。昨今の戦隊では12台合体など当たり前のように見えますが、オモチャの技術進歩を待つには、それ相応の時を要するものですね。

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