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Vol.3 映画『劔岳 点の記』木村大作監督「東映社員に告ぐ!」

日本の映画界の現状について

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会

鈴木) 『劔岳』が主役の映画だという印象を持ちました。一番好きなシーンは、浅野さんと香川さんが下見で登り、夕景の中で二人がこけ汁を飲むシーン、次に二人の後姿から富士山が出てくる雲海のシーンです。まるで絵画を見るようにきれいでした。
木村) 大体僕の映画見たらね、夕方は"橙色"だよ。朝は"ピンク色"だよ。そういう風にずーっと感じているんだ。
鈴木)今僕たちは映画のことを知らずに、管理セクションに配属されていますが、他社さんも同じ状況のようです。今の映画界の現状など教えてください。
木村) でも、東映に入れたってことはあるよね。東宝、松竹も含めてあまり入れないんだから。今度のスタッフに"加藤"って助監督がいるんだけど、そいつは大手メーカーに決まっていたんだけど、そこを蹴って東映に入った。助監督のサードだけど、そいつがこの映画で、例えば手旗信号とか測量機器の使い方、その他俺が頼んだ事を国会図書館とかに行って、全部調べてもってきた。ある時からこいつできるなって思った。そんなやつがいるよ。要するに、現場は今や狭き門になってしまってさ、映画学校の出身者はいるけどね。企業は育てようという気がないから。今は完全にフリーの時代になってきている。今日本の映画界はこうなっているんだから、俺はフリーランスがうまく働ける世界になってほしいね。でも最近は経済がこういう状況になって、暇しているやつが多い。

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会

もっと悲しいのは、俺たちこの映画2年間やっているじゃないか。どこかの会社に所属していれば仕事があるけど、完全なフリーは2年間その世界から忘れられているんだよ。戻ろうと思っても、すでに他の人がやって戻れない状態が起こっている。そういうのを見ていると俺も何かやらなくてはいけないって思うんだよ。まあ、この映画の世界は、本当に好きじゃないと残れない世界。残れる奴とそうでない奴がはっきりしている。現状ではそういうことしか答えることしかできない。

この映画は無理をしなければ撮れない

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会

自然を撮るというのは、スタッフと俳優が現場でじーっと待って、3分間しかないその瞬間を切り取らなくてはならない。困難なこと、厳しいことをやらないと撮れない。それは美しいというよりむしろ神々しいものだと思う。50年やってきた俺がすげえなあって思うんだから、一般の方がそう思わないわけがない。そうした自信はあるんだ。大体一発でうまくできたっていう時はないよ。5時間歩いて今日はだめとか、そういうのばっかりだった。でも、そういうことを厭わずアタックをし続ける精神力ができないとこの映画はできない。
中にはあそこまで行かなくては駄目でしょうかって言う奴も出てくる。「駄目だよ、明治40年、柴崎芳太郎が行っているんだよ。だから行くんだ。」ってね。そう意味では、これは撮影ではない"苦行"だって言って始まった。全員が自分を行者と感じたと思うよ。人によっては、映画をもっと楽に撮ればいいじゃないですかっていう人もいるけれどね。
3年くらい前かな、水泳の北島康介さんが大阪で世界大会か何かで肉離れを起こしているなか金メダルを取ったときのインタビューで、「何でそんなに無理をするんですか」という質問に対し、北島さんは良いこと言ったよ。「無理をしなければ金メダルは取れない」。世界一になるのは、なまはんかなことではなれない、相当無理していると思うんだよ。それで、「この映画は無理をしなければ撮れない」って宣言したんだ。俺はよく言うんだけど、人生で厳しい道と楽な道があったら、厳しい方を選べって言うんだ。楽な方は楽だけど何も出てこないよ。厳しいことに挑戦し、通り抜けた時に何かが出てくる可能性が生まれる。もしかしたら何も出てこないかもしれない。俺の人生はそうしたことを潜り抜けたからこそ、今があるとしか思えないよ。

フジテレビ・亀山千広氏との関係

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会
今から13か14年前にアルバイトを探しに行ったことがある。その頃は、仕事が来ない。貯金で暮らしていたんだけど、どんどん目減りしていく。今のペースでどれだけ行けるのか5ヶ月間家計簿を付けてみたんだ。そしたらあと2年しか暮らせないんだよ。これはまずいなと思って、この業界では絶対頭は下げないけど、他の仕事だったらニコってできるし(笑)、運転代行業のアルバイトを探して、面接を受けに行ったんだ。当時その会社の客としては、青年実業家などの若い客で生意気な奴が多いということで、駄目だっていわれた。何でかって聞いたら、見るからにあなたは生意気そうだって。必ず問題を起こすって(笑)。がっくりしている時に、映画の話が来たんだよ。結局アルバイトはしなくて済んだ。フジテレビのある番組で、この話をばっーとしゃべって有名な話になったんだ。でも全然恥ずかしいとは思わない。
先ずは映画の前に生きることがあるんだから。他にもバラエティ番組やかくし芸大会の審査員でも使ってもらったな。そうやってフジテレビには2年間食わしてもらっていた。そういったことがあったので、亀山さんに企画を持って行けるんだよ。その時は本当にお世話になったなあと思うよ。
小川)亀山さんとは何時ごろから親交があったのですか
木村) 『容疑者 室井慎次』っていう映画で、Cキャメラで俺が手伝いにいったんだ。何でかというと、その前に東宝で『誘拐』という映画を作ったんだ。その時に約80名のキャメラマンがノーギャラで参加してくれたんだ。その時のお礼もあって、それぞれのキャメラマンに今度何かあったらノーギャラで手伝うよって言ったんだ。でも、誰も声を掛けてくれない(笑)
小川)恐縮しますよね。
木村) そして林淳一郎っていうキャメラマンが、Cキャメでもいいですかって言うからいいよって言って、現場に行ったら亀山さんはプロデューサーとして居たんだ。そこから亀山さんとはいろいろ話をするようになったんだ。

人材を育てるということ

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会

 

小川)俳優を育てるということについてはどうですか。
木村) それは難しいよ。つきっきりで売り込みも含めてやらないと厳しいよ。そういう人がつかないと駄目だよ。
小川)次回作のご予定は。今後の映画界でキャメラマンを育てるということはどうですか。
木村) 俺に何かを感じて、そういう風に生きていくっていうことだね。『劔岳 点の記』に携わった若手の中にも、将来こいつ伸びるなって奴が何人かいる。運も必要だからな。運が向いたらガッっと来るかもしれないよ。
そういう意味では多少育てたのかもしれないけど、後は自分でいかないとだめだよな。だから弟子とかいう関係は嫌なんだよ。そうやって来ても全部断っているよ。美術の"福澤勝広"なんかは『鉄道員(ぽっぽや)』で俺が引っ張ったけど、自分の力であそこまでになった。人に頼るようでは絶対だめだよ。
小川)僕たちが現場を見る機会とかはあるんですか
木村) それはあるんじゃない。見る組を選ばないとな。ずるばっかりする組を見てもしょうがないぞ。(笑)俺はずるしてないからな。この映画を作るとき、ただ一度の監督って言ってやったんだけど、出来上がってみて試写会なんかで全国廻ってみると、皆さん非常に感動してくれている。そういうのを見たり聞いたりしていると、もう1本くらいいいかなと思う時があるよね(笑)
『劔岳 点の記』ができあがって、実は東宝や松竹の人にも見てもらったんだ、TOHOシネマズや松竹MOVIXの協力も頂かないとな。そうしたらみんな、「日本映画界として絶対当てなければならない」って言ってくれたんだよ。今はシネコンの時代、自由に作品をかけれる時代だからな。

全員)今回の出席者全員、特別宣伝員として頑張ります。
木村) よろしく頼むぞ、豚が(豚インフルエンザ)怖いんだよな。(笑)夢で出てくるんだよ、枕元でブーブー言ってな。(笑)

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