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Vol.3 映画『劔岳 点の記』木村大作監督「東映社員に告ぐ!」

映画の現場というもの

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会

北村) 映画を見ていて、先ずは劔岳に限らず多くの人々が山を登ったことで、日本地図が出来上がったという事実に感動しました。それと、メイキングを見てキャストやスタッフの皆さんの臨場感が伝わり、まるで自分自身が追体験をするようでした。私はこうして映画会社に入社しましたが、同期では誰も映画セクションへの配属はなく、正直"現場"というものが全く分かりません。実際の現場とはどういうものなのでしょうか?
木村) まあ、メイキングみたいな雰囲気なんだけどな(笑)。女性が二人いるよ。照明部の"岡元みゆき"と、メイクの"山下みどり"。最初の秋ロケは男だけだったんだよ。
そしたら、皆が殺伐としていてさ、「木村さん、何で女性スタッフを使わないんです」って文句ばっかり言うんだよ。(笑)で、山小屋にかわいい子なんかいると、「監督、スタッフに加えてくれ」って言うんで、山小屋であった何人かの女性をその場で面接して、秋のロケではアルバイトとして雇ったんだ。例えば「この組は、変な人間が多い。でも嫌な奴はいない。」で、ぜひやりたいと言うから、20日間くらい居たかな。ただ、当然映画のことは何も分からないから、一所懸命働いてくれたけど、山登りの現場は難しかったね。本人は希望していたけれど、次のロケではお断りしたんだ。そうしたら、その3日後に、自分が行きたいと思っていた会社から採用通知が届いたんだな。ほっとしたよ。それで考えたんだ、映画にもちゃんとした女性スタッフがいるんだからって、さっきの女性二人を選んだんだ。何で選んだかというと、男を屁とも思っていないんだよ、あの二人は。ああいう中に入るには、そういう人じゃなきゃ駄目。男あしらいが上手いんだよね。俺なんかからかわれていたよ(笑)
 

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会

それと、山で生活するというのは格好つけていても生きられません。1日、2日ならいいけれど、2年間200日も入ると、どこも休まるところがないんだよ。 だから、人間の素が全部出てくる。そうすると、精神的にふっーとなってくる人間が出てくるんだ。2年間で9人、そうしたスタッフには辞めてもらったよ。お前は次の現場からは駄目だって言ってね。そうすると、皆残して下さいって泣くんだよ。でも、俺は知らん振りをしていたよ。
何でかと言うと、立山ガイドの方たち、僕らの命を預かっている人たちね、なかでもリーダーの"多賀谷"さんって人が、「山は精神的に弱くなると危ない」って言うんだ。 やめてもらう人の相談をその多賀谷さんにしてみると、「私も同じ人が危ないと思っていました」って言ったんだ。
自分の事を考えているやつが一番強いんだ。スタッフには俺について来るという考えで、この仕事を引き受けるんだったら、使わないと言ったんだ。自分のためにやるっていう奴しか使わない。俺も、今があるのは、35から38歳の時に『八甲田山』という映画をやった。それを通り過ぎたから今があると思う。だから、この『劔岳 点の記』を最後までやったスタッフは、将来強い武器になると思うよ。

木村大作のルーツ

木村大作監督
中尾) 映画を見て、先ず絵画みたいにきれいだと思いました。私が今まで見た ことのないものでした。映画を拝見し、そして今日こうしてお話を伺っている と、本当にブレない方だなと思いました。何かを貫いていく力が強い方だと実感 しました。映画が本当に好きなんだなと。そのルーツというか、若い頃からそう だったのか。また子供時代はどうだったのかを教えてください。
木村) 例えば18歳の時を振り返っても、全く同じだな。『八甲田山』をやったときは、まだキャメラマンとしては若くして抜擢されたんだ。今自分はノーマルだと思っているけど、その時は狂っているかと思うくらい誰の言うことも聞かず、わーっとやっていたから。それをうまく使っていた監督たちいるっていうことなんだけれどね。
中尾) でも、まったく楽なことではなかったと思うんですが。
木村) 「八甲田山」が、映画史上の中で一番きつい仕事だと思っていたんだけれど、今回『劔岳 点の記』をやってみたらそれを数十倍超えていたっていうのはあるよね。学生時代は全部番長だったよ。小・中・高校とね。その頃は今と違って、暴力沙汰が随分あってよく番長どうしで戦っていたよ。 中学は葛飾区にある桜道中学っていうんだけど、生徒会長になりたい奴なんかいると、全部俺にところに頼みに来ていた。俺が応援演説なんかをすると、全部通るんだよ。
中尾) すごい上手だと思います。
木村) まあね。(笑)学校時代からずーっとこんな感じだったね。ぶれないって言っていたけど、この間、最近取材をよく受けるんで、昔あった「平凡パンチ」で、40歳の時に4ページの特集を組まれているんだ。その頃は結構格好よくってね。ハンティングワールドの合羽にジーパン姿、カウボーイの靴なんかをはいている写真が載っている。その雑誌が図書館にあるっていうんで、コピーをとってきて貰い、読んで皆笑っていたよ、昨日言っていたことと同じじゃねえかって(笑)。それだけぶれない。じゃあばかかって話なんだけどね。まあ、ぶれているのは女性だけだね。(笑)みんなうまくいかないなあ。こういうタイプだから駄目なんだと思うよ。女性と男性の区別が付けられないんだ。
中尾) 接し方が同じになってしまうんですね。
木村) そういうこと。何か余計なことがあるとばかやろーってなるしね。よく言えば、最初はいいと思っても、だんだんこの人なんだろうなって思うんだろうな。例えば、今日は葉山にドライブに行こうってなったとする。「大ちゃん、今日もロケハン」って必ず言われるんだよ。何か風景をつい真剣に見ちゃうんだ。そしてコンビ二なんかに入って雑誌2、3冊を買って、海に着くと、悪いけど眠いからこれ読んでってなるんだよ。だから全然うまくいかない。一番難しいのは、男も女も異性と付き合うことなんじゃないかな。映画づくりなんてそれに比べてみりゃ楽なもんだよ。

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