谷本)
観る前のイメージは、若い人向けの映画と思ったのですが、落ち着いた恋愛の話で、上の層にも共感される映画だと思いました。ターゲットの設定はしていますか?
香月)
難しい質問ですね。出来上がった作品がそうなったというか。軽い青春映画にはしたくなかったという思いはありましたけど。僕は昔から“自己犠牲もの”が好きで、僕の撮った作品はそうなんですが、“やくざ”であっても最後は自分の命をかけて悪をやっつける。東映の仁侠映画もそうでしょう。人間の美徳というか、動物と違うのはそれしかないと思うんです。企画の有川さん(東映・本作品企画者)と話を作っていく中で、女子高生だけをターゲットにしたアイドル映画にはしたくはなかったんです。東映の映画というのは昔からどこか“骨太”。軽くないというか、やくざ映画にしても筋が1本通っていましたから。ましてや命もかかってるストーリーです。脚本のときから今っぽい台詞を書かずに“王道”の映画にしたかったんです。
樋口)
この映画には、よさこいと写真があって、それが交わるのがラストの写真「君が踊る、夏」とう構成でした。劇中で写真を映画で見せるのは難しいと思いました。その点はどう考えられましたか。
香月)
特に難しいとは思いませんでした。
樋口)
確かにあの写真は映画を象徴するシーンでした。どのようにしてあの写真を選ばれたのですか?
香月)
多数決ですよ(笑)。有川さんとスタッフで何枚か選んで、最後に溝端君に選んでもらったんです。主役の新平が見て涙が出ないといけないですからね。
樋口)
更に伺いますが、タイトルに合わせてあの写真なのか、写真があってのタイトルなのでしょうか?
映画『君が踊る、夏』について
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東映らしい作品づくり |
香月)
もちろん、タイトルが先です。「君が踊る」のは全員です。新平や香織だけでなくみんな踊っている、それを象徴したのがあのタイトルです。それを藤原竜也さん演じる先輩カメラマンが見抜くわけです。これが本当の“フォーカスのあっている写真”なんだ、テクニックで撮ろうとしても撮れないということをね。

映画『君が踊る、夏』より
谷本) 監督は実際の「よさこい」をご覧になっていますか。
香月) 勿論見ています。圧巻でしたね。
谷本) 踊り、演奏と生で見た時の迫力って映像にするのは大変だと思いますが。
香月) これが難しかった。アメリカの映画ではデジタル合成とかでよくそうしますが、擬似の映像を作ることをあまりしたくなかったんです。この祭りはみんなが知っている祭りと踊りですから。そこで4年前企画が立ち上がった時に、キャメラを持って祭りを見に行きました。いろいろな撮り方をして実験してみたら、撮った画に全然迫力がない。今だったら3Dもあるかも知れませんが、2Dでこの迫力は難しくて悩みましたね。でもやるしかないから。その結果があの画なんです。
谷本) すごくきれいでした。導入部分の踊りは全体を捉えているので、生で見たいなと思いましたが、ラストの踊りでは旗の動きが入り、迫力があってかっこ良かった。
香月) それと“音”です。僕は試写などでも音レベルを下げないようにお願いしています。祭りのシーンを観た人が、その世界に入って来れるように計算して作ったつもりですから。僕が現地に入って感じたのは音、ハートにずんずん来る振動音。その迫力を伝えられるようにスタッフと一緒に苦労しました。
司会) 監督が溝端さん始め役者さんを乗せたということもあるのでは?
香月) 主役を張れる役者は集中力が違います。でなきゃ成れませんから、絶対やると信じていました。プロ意識が強く、それだけのポジションをやってきた人は違うものです。実は一番心配していたのは周りの子(役者)たち。彼らが本物になってないと、この映画、踊り自体が軽くなってしまいます。そこは賭けみたいなところがありました。“画作り”にもこだわりました。例えば高知城をバックに踊るシーン。 撮影の日、お城に工事が入っていて養生が貼ってあったんです。でもわざわざその日だけ取ってもらいました。合成でもやれましたが、踊る方も本物で行くのだから、周り も“本物の画”で行かなくてはという気持ちがあった。スタッフもごまかさない、だから踊るキャストもごまかし無し。みたいな。
谷本) そこにこだわられた?
香月) はい。今の映画はCGでなんとでもなります。しかし、アナログの強さ、それはエネルギーなんですよ。デジタルで作った画は見た目一緒のようですが、画にエネルギーがない。たぶんオーラが焼きつかないんですよ。映画づくりには物作りに向かうエネルギーが必要だと思います。それによって監督がスタッフを引っ張っていく。映画作りっていうのはそういうことだと思います。
谷本) 監督の仕事とはスタッフを引っ張っていくことですか?
香月) 監督は中間管理職みたいなものですからね。現場の責任者なんです。現場では船頭が多くて、皆がばらばらだとまとまらないですからね。その中で“OK”を出すのが監督の仕事です。

映画『君が踊る、夏』

映画『君が踊る、夏』より
谷本) 監督は実際の「よさこい」をご覧になっていますか。
香月) 勿論見ています。圧巻でしたね。
谷本) 踊り、演奏と生で見た時の迫力って映像にするのは大変だと思いますが。
香月) これが難しかった。アメリカの映画ではデジタル合成とかでよくそうしますが、擬似の映像を作ることをあまりしたくなかったんです。この祭りはみんなが知っている祭りと踊りですから。そこで4年前企画が立ち上がった時に、キャメラを持って祭りを見に行きました。いろいろな撮り方をして実験してみたら、撮った画に全然迫力がない。今だったら3Dもあるかも知れませんが、2Dでこの迫力は難しくて悩みましたね。でもやるしかないから。その結果があの画なんです。
谷本) すごくきれいでした。導入部分の踊りは全体を捉えているので、生で見たいなと思いましたが、ラストの踊りでは旗の動きが入り、迫力があってかっこ良かった。
香月) それと“音”です。僕は試写などでも音レベルを下げないようにお願いしています。祭りのシーンを観た人が、その世界に入って来れるように計算して作ったつもりですから。僕が現地に入って感じたのは音、ハートにずんずん来る振動音。その迫力を伝えられるようにスタッフと一緒に苦労しました。
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役者との関係 |
司会) 監督が溝端さん始め役者さんを乗せたということもあるのでは?
香月) 主役を張れる役者は集中力が違います。でなきゃ成れませんから、絶対やると信じていました。プロ意識が強く、それだけのポジションをやってきた人は違うものです。実は一番心配していたのは周りの子(役者)たち。彼らが本物になってないと、この映画、踊り自体が軽くなってしまいます。そこは賭けみたいなところがありました。“画作り”にもこだわりました。例えば高知城をバックに踊るシーン。 撮影の日、お城に工事が入っていて養生が貼ってあったんです。でもわざわざその日だけ取ってもらいました。合成でもやれましたが、踊る方も本物で行くのだから、周り も“本物の画”で行かなくてはという気持ちがあった。スタッフもごまかさない、だから踊るキャストもごまかし無し。みたいな。
谷本) そこにこだわられた?
香月) はい。今の映画はCGでなんとでもなります。しかし、アナログの強さ、それはエネルギーなんですよ。デジタルで作った画は見た目一緒のようですが、画にエネルギーがない。たぶんオーラが焼きつかないんですよ。映画づくりには物作りに向かうエネルギーが必要だと思います。それによって監督がスタッフを引っ張っていく。映画作りっていうのはそういうことだと思います。
谷本) 監督の仕事とはスタッフを引っ張っていくことですか?
香月) 監督は中間管理職みたいなものですからね。現場の責任者なんです。現場では船頭が多くて、皆がばらばらだとまとまらないですからね。その中で“OK”を出すのが監督の仕事です。

映画『君が踊る、夏』
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【目次】
- 今回は、東映撮影所出身である「香月秀之監督」の登場です!(1/5)
- 33歳のとき映画界へ(2/5)
- 映画『君が踊る、夏』について(3/5)
- 撮影現場について(4/5)
- 東映について(5/5)