東映ホーム > 東映マイスター > vol11 『孤高のメス』公開記念 成島 出監督 映画の撮影現場について

映画マイスター 映画『孤高のメス』公開記念 「成島 出監督~映画への熱き思い~」

映画の撮影現場について


撮影所のシステム
丸山)僕は映画の現場を知りませんが、監督はそれこそ“孤高”で、すべて監督が決めるというイメージがありますが。

成島)もちろんそういうタイプの監督さんもいます。でもそれは、撮影所がしっかりしていた時代はできた。昔、大先輩に教わったんだけど、昔の撮影所のイメージはピラミッド型。監督が上で、役者、その下にスタッフがたくさんいたので、監督が変わろうと撮影所が機能して、映画は成立したんです。今は逆で、監督は下に居る。つまり“逆三角形”です。「監督や主役がぐらついたら、全スタッフがぐらついてしまう。これを覚えとけ」って言われた。但し安定するためには、スタッフがしっかりして上から押さえてくれることは大事なんですが。やはりどちらにあっても変わらないのは“人”。今や撮影所システムが崩れてしまった。撮影所のあるスタッフが倒れたら、他のスタッフがすぐバックアップするような優秀な人材が常備されていたのが強みでした。 実は“病院もそうだ”と聞きました。“生体肝移植”を始め難しい手術は、日本ぐらいしかやっていないんですが、ほとんど失敗していない。けれど“50年先”のお医者さんが出来るかって聞いたら、多分出来ないっていうんですよ。この技術は残らないだろうって。町工場の職人さんも同じ。そして映画界もハリウッドに対抗できるような人材を、どんどん失くしている。当麻も同じで、50年後は居ない。ですから失っていくであろう“日本人の生き様”を撮っておこうと思った。

岩崎)撮影所を含め映画製作のあり方が、昔のスタイルに戻った方が良いと感じますか。

成島)それは今更無理だし、何より効率が悪すぎる。またその頃とは映画館数や動員数も違う。例えば昔は“戦艦大和”のような大型艦が良かったけれど、今は“イージス艦”のようにコンパクトで能力を高めたチームを作らなければならない。それは車でも飲み物でも一緒です。現場では、失ったものや今のリスクを把握した上で、他の方式を取り入れるなど、臨機応変に対応する力を養っておかないと、特に僕らフリーの人間は置いてかれるし、新たな物を作り出すことなんてできない。これは映画だけの話ではないと思います。

「孤高のメス」予告編

東映ニュースチャンネルで配信中

東映に対するイメージ

成島)東映は大好きな会社です。いろいろ作品を撮らせてもらって恩返しがしたいと思っています。僕がメジャーになれたのは、当時京都で“坂上さん(現・㈱東映京都スタジオ特別参与)”と『恋極道』(脚本)で一緒に仕事をしていて、その本を見た深作さんが褒めてくれたこともあり、ある“大作”の脚本の話があった時に、“天野さん”が成島でどうかと推薦してくれました。まだその時は、天野さんには会ったことがなくて。坂上さんも「成島なら嬉しいよ」って言ってくれた。それでいきなり“天野さん”から家に電話がかかってきた。本当にびっくりしましたよ。作品と力を見抜いてくれて、結局その映画は実現しませんでしたが、その後メジャー作品での脚本の仕事が続くことになりました。東映では『クライマーズ・ハイ』に行き着くし、きっかけは東映から頂いた。こうした抜擢の仕方なんかは他社には絶対ない。そのスタイルや大胆な社風、そして人間の可能性を伸ばす姿勢はずっと持っていてほしいと思います。

今回、東京撮影所の所長であった“生田さん(前・東映東京撮影所長(故人)”の名前が最後に出る作品になります。正直予算面で厳しくて、“東撮”としてどうしようかっていう時期がありました。でも生田さんがGOをくれました。「これは東撮としてやるべきだ」と言ってね。予算が厳しいなかでも5番7番ステージを調整して空けてくれた。一度決断したら大胆、それが生田さんのやり方でした。葬儀の時、“森田(芳光)監督”が「生田さんになってトイレがきれいなった」とか言っていて、森田さんらしいと思いましたが、確かに東撮を表現しているところがあってね。守衛さんは怖かったけどすごく柔らかくなったこととか。それは良いことだと思いますね。何というか、“東映”は大陸的な感じがします。一見村社会のように見えるけれど、外からの人をちゃんと迎えてくれる。

そして迎えたら一緒にどっぷりつかってやってくれるみたいな。 “東映の強み”だと思います。東映の人とは、個人的にも仲が良くて、酒なんかを飲む仲間が多いですね。それと何より熱気があります。

丸山)私は映画とは違うイベントのセクションにいますが、確かに社風として、義理・人情に厚く、人とのつながりを大事にするというのはあるのかもしれませんね。

成島)普通のことを普通にやるというのは結構難しい。僕みたいに組織に属していない人間は、本当に“人”だけです。それが無くなれば仕事もなくなるわけですから。“黒澤(明)さん”が、ハリウッドの監督は先輩を訪ねたりするのは普通のことで、何とか先輩から吸収しようとしたとおしゃっていた。映画は技術が大事で、習得した後に自分で取捨選択しけばいい。たとえば以前、撮影所に脚本部があって大先輩もいたのでそういうことができた。昔はよく東映(先輩)の人におごってもらいましたね。だから飯に行くにも、後輩たちに返したい気持ちがあるんです。俺は“司馬遼太郎”っていう人が好きでね。彼は自分の持ち家を持たなかったんだ。あれだけ高いギャラを貰っても、1本書くごとに全部使い果たしていた。でもヒット作になればなるほどギャラを上げていったんです。さすがに俺もそこまではなれないけど、気分だけは真似したいなって。昔の監督は、よくギャラの半分をスタッフのために使ったといいます。だから、その当時監督のギャラって今とあまり変わらなかったといわれているから、すごい金額をスタッフのために使っていたんですね。

次へ

東映リリース