東映ホーム > 東映マイスター > vol11 『孤高のメス』公開記念 成島 出監督 映画に対する思い

映画マイスター 映画『孤高のメス』公開記念 「成島 出監督~映画への熱き思い~」

映画に対する思い


映画との出会い
岩崎)ところで監督は“山梨出身”ですね。実は僕も同郷で、“甲府第一高校”出身です。

成島)僕は一高のすぐ近くの“東高”だよ。僕の時はくじ引きだったんで選べなかった。甲府時代は映画には興味がなくて、上京してから“名画座”なんかで観た。当時は500円で3本も観れて、はまっちゃって。今思い返すと何も観てなかったからどれも面白かったんです。でも、当時の流行であった“ゴダール主義”にも染まらず、『ローマの休日』もいいけど、“小津さん”もいいって言っていた。周りからはそれは変だと言われたけどね(笑)。1年間染まらずに、浴びるようにもの凄い本数の映画を観たことが良かったと思う。それで大学で何となく“映研”に入って、自主映画で“ぴあ”のコンテストに応募したら、ある作品が入選したんです。その時に“長谷川和彦さん”“大島渚さん”が推薦してくれて、飲んだ席で二人から「こいつは監督になるしかない」って言われた。だったらとその日に決めたんです(笑)。そこからは自己暗示ですよ。僕は真面目じゃなくて勉強もしなかったんですが、映画だと“医学”も勉強する。『T.R.Y.』の時は中国革命や中国史を勉強しましたが、頭に入るんですよ。映画以外は、スポーツも勉強も駄目。そこで大島さんからそんなことを言われた日にはこれしかないって。1本かそこら助監督やって、2年くらいで監督になれるって言われて、それから監督やるまで20年かかった(笑)。

岩崎)現場で学んだということですか。

成島)学校には行っていません。他はひねくれていたけれど、映画に対してだけは“素直”だった。先輩からは「監督になりたかったら先ずはシナリオを勉強しろ」と言われた。それから5年間はずっとシナリオの書き方をおぼえました。でも映画化には至らず、ある時このまま現場にも出ないのはまずいだろうと思って、お願いして相米監督のもとで助監督をやるようになった。知識もなかったので、1本1本新鮮で疑うことがありませんでした。映画学校の奴には勝てないと思ったから、何でも吸収しようとしていた。その頃出会った“役所さん”“柄本明さん”を始め、その頃の仲間と今また一緒にやっているという感じです。特に“堤さん”や“夏川さん”とは、僕と同じ遅咲きで苦労してあそこまでなった役者さんです。どこか吸収の仕方なのか、共通したところがあるように思います。例えばこの映画に対する考え方は、堤さんと似ていて、お互い周りが良くないと自分は立たないと分かっていました。堤さんは「本当の主役は夏川さんと余さん」と言い続けていました。「自分は受けだから」って。

丸山)監督と脚本とで、作品に対する向き合い方は違いますか。

成島)50人も100人も使って監督するのも楽しいけど、そうすると孤独に机に向っていたくなる。いま千葉の房総に住んでいますが、田舎屋を借りていて未だに家賃は5万。敷地が300坪もあって、シナリオを書いている時は、庭で畑をやったり海まで釣りに行くとかして自分のペースで仕事をしています。そうしているうちに現場が恋しくなってくる。その繰り返しです。

「孤高のメス」よりワンシーン

お客さんに教わること

丸山)“男性、父親像”を描いた作品が多いと思いますが、今回の作品では夏川さん、余さんと女性が魅力的に描かれていました。今後、女性を主軸にした作品を作る予定は?

成島)脚本家時代から「成島は女が描けない」って言われていたので、「そうじゃないぞ」というところを見せようと思って。次に企画している映画は、男がほとんど出てこない映画です。

丸山)それは監督として。

成島)そうです。“竹内結子さん”とか“北乃きいちゃん”とかやっているんだけどね(笑)。映画づくりで大切にしていることは、“人を元気にすること”。自分には才能がないって分かっているんです。だから人を大事にしたり、脚本づくりを大切にしたり。例えば、自分は構成に欲張らずに人に任せておくとか、なるべくシンプルな話にするとか。難しい話を取り上げ薄く広くやっても、喜びがない。僕みたいなタイプはシンプルな話を深くやった方が、やりがいもあるし、キャストやスタッフに伝えることができるんです。広げた場合、口の立つ監督は裁けるんでしょうが、僕はそうではなくて“一つのこと”を堤さん、夏川さんに伝えたい。それはきっと劇場の来られるお客さんにも伝わることになるから。それは自分の中の大事なルールとして持っています。そういう姿勢は、家賃5万円の家にしか住まないことと根本的に似ているんですが、別にお金のために映画をやろうって思ったのではありません。嫌だと思う仕事を続けていて評価を下げて映画を撮れなくなった監督をいっぱい見ています。だったら学生時代のように安いところに住んで、畑を耕したり、本や映画を観まくっていた方がいい。

岩崎)上映中に劇場に行ったりするのですか。

成島)もちろんです。“チャップリン”が、「次の1本のために、お客さんにすごく教わる」と言っていた。自分の昔の作品は観ませんが、劇場には行く。すると、例えば北海道と九州で見るのでは全然反応が違うし、東京ももちろん全国で違うんですよ。もし皆さんがキャンペーンで行ったらよく分かります。チャップリンが言っていたのは“お客さんに教わる”ということ。友人がビール会社で、商品づくりにおいて唯一の先生はお客さまって言い切る。自動車会社の友人もまったく同じ事を言うわけ。映画も商品で、1800円払って買ってもらっているわけだから、喜んでいるかは気になるし、ここはこう思っていたのに伝わらなかったら次の宿題だよね。お客さんも常に流れているから、同じ映画を観ても、極端に言えばバブルの時と今では感覚が違うように、そんな広くなくても数ヶ月でも違う。次の作品のためにも、僕はそのことを知っておきたいと思う。1800円を払って見るお客さんの生の反応が気になります。「つまんない」って言われたこともあるし、それとエレベーターやエスカレーターね。あれは一番の勉強の場。びしびし打たれるけどね。でも生の声は、「ああそうか」と思うことがいっぱいあります。

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