鎌田)教育映像には“児童劇映画”というのがあり、歴史があります。何年か前に売れなくなって制作を止めましたが、復活させたいなぁとは思っています。最後に僕が担当したのは『身障犬ギブのおくりもの』という作品で、実際の話を元にした、片足が不自由な犬と少女との交流の話です。東京撮影所で作りました。
中鉢)児童劇映画は、昭和30年ごろに東映教育映画が創部された時から作り始められたものです。第一回作品が『ふろたき大将』で、石橋蓮司さんが出演していて、すごく感動的です。私も大好きで、何度も観ています。石橋蓮司さんが子どもの頃の作品で、戦後の広島が舞台です。町を彷徨う戦争孤児役の石橋さんが“人さらい”の黒マントに島に連れて行かれます。実は、主人公はその島の孤児院に入ることになるのですが、孤児だったので(環境的に)勉強が出来なくて、でっかいのに小さい子のクラスにいるんですね。そこで先生が考えて、君を風呂焚き大将に任命すると宣言します。風呂焚きの順番や、薪の数を計算しなくてはいけないので、算数とか国語を自分からどんどん勉強するようになって、自信をつけていくんですよね。生きていく“誇り”を取り戻していって、最後就職するという話です。
山上)今も、同じテーマでいけますよね。
中鉢)実は、東映ビデオから、現在一般向けにDVD発売中です(笑)。
山上)今は、子どもにもオールラウンダーを求めすぎています。でも実際には凸凹しているのが子どもであり、何かが出来なくても何かが出来る、出来るところの役割を与えられることで皆と交わっていけたり、その子の尊厳が守られたりしますよね。私もそういう話は大事だなぁって思っていましたが、先にやられていたのかって感じです(笑)。
中鉢)東映ビデオから一般向けに昔の児童劇作品が6タイトル出されています。渋谷の中華料理屋に行ったとき、たまたま隣に石橋(蓮司)さんがいらっしゃったんですよ。「東映の教育映画です」と言ったら「僕はね、子どものとき東映教育映画出たんだよ」と仰っていました(笑)。
鎌田)僕は以前、『身障犬ギブのおくりもの』の獣医役で出ていただいたことがあったときも仰ってました。
山上)安心して親子で楽しみながら、色々考えられる20、30分という映像のものは中々ないので、こういった作品を観たいとよく言われます。学校で留まるのではなく、家庭にも届くようにしたいです。例えば、「PTAのママさんグループで作品を借りられないんですか?」と言われた時に、結構時間が掛かると言うと、「ではやらない」って言われてしまって(笑)。そうした壁はあると感じています。
鎌田)作品を観て頂いて、そのなかに色々な気付きを盛り込んでいますが、それに気付いて頂けたら成功ですよね。プロデューサー名利につきます。
山上)子育てに悩んでいるお母さんは、「人に相談するのがこわい」って皆言うんですね。私には子どもはいませんが、色々相談を受けます。なぜ私にかというと、「子育て経験者には怒られそうな気がする」と。「あなたそんなことくらいで悩んでるの」とか上から言われそうって(笑)。だから何かフックがあって、皆で色んな意見を交換しようみたいな場が生まれるといいんですね。意外と皆、直接の人間関係を怖がる傾向になってきていると感じます
鎌田)そういう意味では、ドメスティックバイオレンスも同じですね。
山上)抱えこんでいる方多いですよね。家族の恥だから、とか。
鎌田)企業が買うようになってきました。人権問題の“セクハラ、パワハラ”を採り上げたものです。研修で映像を見て職場が良くなれば有難いですね。
中鉢)コンプライアンス研修をよくやっていて、銀行さんなどがビデオを買って行員の研修用に使っていただいたりするそうです。2万人ぐらいで見て頂いている企業さんもあります。『企業に求められる人権意識とは』という作品は、山上さんと一度やりましたよね。
山上)これからも様々なものを一緒に作っていきたいですね。

司会)ありがとうございました。