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教育映像マイスター「教育映像の魅力とは」

同和問題を解決するには、根本にある、“人間はなぜ差別するのか”に迫っていかなければならない


新たな試み“ティーチ・イン”
山上)もう少し活動を盛り上げて生きたいですね。私も作ったものに対する感想を直接聞く機会がなかなかないので。講演会もやっていますが、個人的に一番好きな形は、一つの学校に呼ばれて、保護者の方たちと一緒に観ることです。最初ゲストで呼ばれたときは講演形式で、見どころを語って下さいと言われました。でも、ちょっとつまらないかなと思ったので、“ティーチ・イン”じゃないですけど、皆さんとの対話形式を提案しました。皆さんから頂いたご意見はどんなものでも構いません、ダメ出しも含めてと。それが自分としても一番良い形でした。鎌田さんと初めて作った『陽だまりの家』という作品でDV問題を取り上げた際、今まで静かだったお母さんが手をあげて、泣きながら「この主人公は私です。ずっとDV問題で悩んでいて、介護でも悩んでいる。そのことを今日初めて人に言えた」と仰っていました。私もすごく感動しました。作品を見た人が、「私もこういう風にして話してみよう、主人公みたいにもっと人と関わってみよう」って思ってくれる。人が動くきっかけを作ることができて良かったなと。また、参加していた皆が思いを共有することができました。せっかく良いコンテンツ、他ではなかなか作れない環境を与えて頂いているので、そういう意味では出来るだけ複合的にして広げていきたいと思います。

中鉢)知っているつもりでも、もう一度考えてみるのは基本なんです。障がい者や介護の問題でも、まず自分を疑ってみる心がないとダメですよね。

山上)人間誰しもグレーな部分があると思うんです。例えば子どもの人権問題に取り組んでいる人が、自分の子どもが国籍の違う人と結婚するとなると嫌だと言う。子どもの問題に一生懸命に関わってくれる心ある人なのに、ある面から見ると差別主義者になります。ですから作中でも、この人は絶対正しい人です、絶対悪い人です、という二極では描けないものなんです。短い時間で色々なことを描くと、どうしてもキャラクターをシンプルにし過ぎてしまいます。以前、ある人から言われました。「差別される人の側にたって人権もので描くときは、絶対良い人に描かれるよね。障がい者だけど良い人、だから差別してはいけない・・・って話になりがち」って。その言葉が心に残っています。

鎌田)障がい者を弱者と思い込みで見ちゃいけないんだよ。

山上)さっきのかわいそうな人なので優しくしてあげましょうという偏見につながるので、間違いやすい部分です。


『親愛なる、あなたへ』、生きる上での問題とは?
中鉢)去年、鎌田プロデューサーが作った『親愛なる、あなたへ』を観たのですが、感動作でした。

『親愛なるあなたへ』(兵庫県)
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鎌田)あれは定年後の人生をどうしようかって話です。僕もちょうど定年間際で、自分のこれからの生き方の、進むべき道を考えればコンペが取れると思いました。私の話でもあります。

中鉢)定年になった年に、奥さんが亡くなり今まで自分には仕事しかなくて、「自分の人生は何だったんだろう」って振り返るという…。

鎌田)もし自分の奥さんが亡くなったら、と思うと途方に暮れるし、涙だよね。

山上)近所の中で取り残されるという。

鎌田)多いでしょうね、近所のこと知らない人は。会社人間で、家事は妻任せ。地域のことは無関心。全て奥さんに頼ってた男 性は特に。

山上)職縁はあるけれども地縁はない。そういう意味で、地方自治体=“兵庫”なんかは多様なテーマを与えてくれます。団塊の世代の今後の生き方をテーマとするケースは余りありません。一見、人権問題?と思いますが、結局“人が生きる問題”なのです。

中鉢)人権啓発といえば、以前は同和問題に対する対策の映画がほとんどでした。時代が変わり、他の人権問題に注目が集まってきて、女性、障がい者、外国人や高齢者などいろいろな人権問題を採り上げていこうという動きが2000年頃から広がってきました。同和問題を解決するためにも、根本にある、“人間はなぜ差別するのか”というところに迫っていかなければならない。そういうところまで掘り下げていかないと、解決していかないことだと思います。

山上)“人間尊重”って考えると、どの分野にも言えることです。ただ少し高齢の方に人権問題をやっていますっていうと同和問題?と言われるので、世代によっては認識の違いもあります。

中鉢)東映教育には、かつて中村稔さんというプロデューサーがいて、1974年に『差別と人権の歴史』という作品を作られました。それは、同和地区にスタッフとプロデューサーが何日も泊まりこんで、実際に現地の人達と触れ合いドキュメンタリーとして作ったもので、これが東映の教育映画が人権問題を取り組むきっかけになった画期的な作品です。それが結構迫力があって評判になって、その後も東映はパイオニアとして同和問題、人権問題を作り続けていきます。現地に行って現地の人の話を聞いて作ろうとする“現場主義”は、東映に根付いています。

山上)昔の同和問題から続いているストックの多さは東映さんならではですよね。他にないっていうくらいです。

今後の教育映画の広がりは?
山上)形を変えている気がします。同和問題など、以前は身元調査をするかしないかの話で、結婚差別や就職差別の問題ばかりクローズアップされていました。今は同和問題を知らない人も多いし、それは過去の話でナンセンスだと若い世代は言います。むしろ下手にそういう話をつつく方が、問題ではないかという意見もあって。だけど、(人の出身地など)全然気にしてないという人が、自分が結婚する時に身内にとやかく言われると、この結婚を考えた方が良いんじゃないかと簡単に流れてしまう。今は、そうした微妙な心理、“そういうあなたの中にもありませんか”という問いかけになってきている気がします。それでも、今の若い人は「僕はそんな・・・」って言いますよね(笑)。

鎌田)私は教育映像部に来て初めて知りました。関心がなければ同和問題を知らないと思います。

中鉢)僕もこの仕事始めるまでほとんど知らなかったです。しかしこの仕事をしていると、まだ地方では同和問題が非常に深刻な問題として残っているのがよくわかります。

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