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マイスターvol.20 映像マイスター:映画『はやぶさ 遥かなる帰還』完成記念インタビュー 「阪本善尚(撮影監督) & 野口光一(VFXスーパーバイザー)」

高感度カメラで表現するキャメラマンの狙い


©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

ただ、この暗さと、ロケセットのような太陽の下を同時に撮れるようなカメラの選定には苦労しました。フィルムカメラであれば問題はないのですが、今回はCGとの関連でフルDIが必須だったので、フィルムだと予算が大変だったわけです。また映画の冒頭のシーンでは、管制室のモニターがブラウン管なので、フリッカーと呼ばれるチラツキが入っているか、フィルムだと現像してみるまで確認ができない。監督にも「阪本さんのデジタル撮影はフィルムっぽいから、デジタル撮影でも構いません。一番効率の良い方法で出撮ってください」と言われたので、デジタルカメラで撮ることにはなったのですが、これまで使っていたカメラでは感度が足りない。そこに、先ほど話に出たSONYのF3という高感度CMOSイメージセンサを搭載したカメラが出てきたんです。実は震災の影響で撮影までに製品化が間に合わないという話だったんですが、SONYの旧知の方にお願いしてベータ版を出してもらい、それで使うことができたんですね。

専門的な話になるんですが、CMOSというのはS/Nという、暗部の明るさを上げてきてもザラザラにならないという良い特性を持っています。この特性を使って、例えば役者さんがライトの当っていない場所で演技をしたとしても、後でグレーディングの時に、そこの部分だけ相当明度を上げたりしているんです。観客が画面の変化に気をとられて、芝居に意識が集中できないことのないよう微妙に、そしてその台詞が終わったらまた暗くなる、というような相当細かいことを、東映デジタルラボの方には頑張ってもらいました。

高感度のカメラを使った利点として、観る方にはあんまり判ってしまうといけないんですが、今回僕は被写界深度を凄く使ったんですね。群衆劇ですから画面には大勢の人がいるのですが、その中で何人、ストーリーを牽引していく役者がいるのか、その都度違うじゃないですか。その人たちだけがフォーカスが当たっていて、あとは少しぼけるくらいの、被写界深度を自由に使ったんですよ。ところが普通は、被写界深度を深くしようとすると、ライトが沢山いるんですよ。そんなのいちいち実際のライトをセッティングしていたら大変です。だけどカメラが高感度であれば、NDのフィルタ【*6】で調整するだけでいい。被写体の焦点深度を1人でも複数でも調整ができる。監督は、画面の中には目一杯人がいてほしい、でもお客さんは自然にフォーカスの合った人に目がスッと行き、ドラマの世界観に入りやすくする。それが僕のトライであり、狙いだったんですね。

もっとも、それをやったんで、野口さん達の作業がつらかったんです。その画から、宇宙空間のはやぶさの画につながった時に、どうしたってCGは深度が深いですから違和感がある。だからレゾリューション変えたり、ちょっとボケを入れていったということなんですね。

野口
でも、ピントを合わせておかないとミニチュアに見える、って言われるんですよね。だからなるべくピントを合わせて作るんですが、そこで阪本さんが深度を出したいといわれる。あんまり、ぼかさないでくださいねって言いながら(笑)そこはある程度匙加減で、少しぼかしたり。

阪本
でもあれは、絶対ミニチュアには見えてないと思うよ(笑)実際のはやぶさの大きさである、6メーターのスケール感を感じてもらえてると思いますよ。




【*6】NDのフィルタ
色彩に影響を与えることなく、光量を抑えることの出来るフィルタ。レンズに装着する。



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