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マイスターvol.20 映像マイスター:映画『はやぶさ 遥かなる帰還』完成記念インタビュー 「阪本善尚(撮影監督) & 野口光一(VFXスーパーバイザー)」

カットを積み重ねて人間を描く


©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

阪本
ドラマ部分の撮影に関して言いますと、僕は監督が役者に芝居をつける時は、基本的に少し離れて傍観的に見ているんです。でも今回は、瀧本監督が芝居に沿って細かにカットアングルを探しながら芝居をつけるので、その時の画のサイズをどうするかなどが、その瞬間を見ていないと狙いがわからなくなる。監督からは大まかに「アップで」など指示はくるけど、細かいことは撮影監督に任されるので、現場ではずっと監督にくっついていましたよ。だから撮影現場のスチールを見ると、いつも一緒に写っている(笑)

瀧本監督は、ある人物のキャラクターを表現するにあたり、そのキャラクターの癖のようなものを的確に捉えるために、細かくカットを割っていることろがある。一番代表的なところは、あれは脚本には書かれてなかったと思いますが、渡辺謙さんと山﨑努さんが神社でかりんとうを食べるところ。山﨑さんは町工場のオヤジなんだけど、町工場で働く芝居を見せるだけでは、なかなかキャラは立ってこない。それを、山﨑さんがかりんとうを持った時の、指爪の染み込んだ油汚れをパッと撮ることで、人物のリアリティが増してくる。なかなか通常考えつかないことですよね。カットを積み重ねていくことで、どういうふうにイマジネーションを膨らませられるかということを、天性として知っているという監督だと思いますね。

そういうことが分かると、僕のカメラワークも変わってくるんですよね。ただ人物を撮るんじゃなくて、その時にキーとなる大切な“モノ”を映してから人物に入る、とか、阿吽の呼吸の中で進めていけました。瀧本監督は原則、モニターを見ないんですね。それは僕も実は賛成で、監督というのは、俳優の目を見て演出して欲しいと思うんです。今は大抵の監督さんは、モニターを見るためにスタッフの後ろのほうに陣取ってしまいますから、結果、俳優の目は監督じゃなく、キャメラの脇にいる僕に向けられてしまう(笑)これは非常に責任感があって厭なんですけど(笑)

でも今回は、カメラのそばに監督がいたわけですね。群集劇なので、どの人まで画面に入っているかは非常に大切なので、それは流石にカメラ横の小さなモニターで確認しながら指示をするんですが、本番に入るとモニターは見ないで、直に俳優の芝居を見ていました。そんなところが、なかなか凄い監督だと思いましたね。そのうちベテランになってくると、画角もわかって、モニターすら見ないでできるようになるんでしょうけどね、昔の監督さんみたいに。

ルックに関してですが、当初から、ドキュメンタリーのように撮りたいというのが狙いだったんですね。最初は手持ちカメラを使うというアイデアが出たんですが、これだけ長い時間を手持ちで撮ると、どうしてもキャメラマンの視線が観客に伝わってしまう。監督も「ドラマに入って来れないかな」ということで、手持ちは狙いのところだけにしましょう、となりました。次に、役者がカメラを意識しないように望遠レンズで撮りましょうというアイデアを出したんですけど、セットデザインを見たら望遠を使えるほどカメラを引くことが出来ない(笑)そのアイデアは、京都の一番大きなスタジオにでも行かないと通用しないんですね。それで発想を切り替えたのは、光。

芝居をしている役者さんにあわせて光を当てるのではなくて、実際の建物のように主光源はセットの上から強い光を当て、デイシーンでは窓からロケセットの自然光のような強い外光を作り、暗部への補助光を使わず、床、壁からの反射光だけの中で芝居をしてもらうなど、どう“器(舞台空間)”に光を当てていくかを、美術監督の若松孝市さんと相談しながら作っていきました。強い陰影のある顔で、時にはあまりライトが当っていない場所に役者さんが行ってしまってもかまわずに撮る、そうすることでリアリティと、力強さを出すことが出来る。


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