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マイスターvol.20 映像マイスター:映画『はやぶさ 遥かなる帰還』完成記念インタビュー 「阪本善尚(撮影監督) & 野口光一(VFXスーパーバイザー)」

監督のこだわりが詰まった満天の星空


©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

野口
監督は最後まで、はやぶさが落ちてくる星空にこだわっていましたね。

阪本
あの星空はね、映画の原作になっている山根一眞さんの『小惑星探査機 はやぶさの大冒険』 に載っている、実際に現地で撮影された写真を再現したいということだったんですね。ただあの写真は、非常に恵まれた天候だったので撮れたもので、最初は僕らには絶対無理だと思ったんですよ。その時に、サブカメラに使っていたSONYのF3に超高感度カメラに出来る機構を見つけ、これなら実際に星空が撮影できるだろうと、スタジオの屋上でテストなどを重ねた上で、オーストラリアのウーメラ砂漠に行ったんです。ところがロケハンの時には綺麗な星空がでたんだけど、本番になったら月が出てしまって、ほとんど星が見えないんです(笑)不幸中の幸いだったのは、はやぶさを見上げる夏川結衣さんを月の明かりで撮影できたこと。彼女は本当の夜の感じに撮れた。星空は撮れなかったけど、まあ、帰ってから野口さんのほうでどうにかなるだろうと(笑)

野口
もう一度星空を撮りに行ってもらいましたよね、いろんなところに。

阪本
いろんなところで撮ってもうまくいかなくて、最後は乗鞍岳の極寒の吹雪の中、撮ってきたんですが、吹雪に閉じ込められて2日帰って来れなかった。

塩田【東映デジタルラボ(株)】
その星空の細かい調整は、最終的にCG作業用のモニターでの表現域を超えていたためデジタルラボのグレーディングルームを使いスクリーンで最終調整を行いました。

阪本
やっぱり、映画のグレーディングしているスクリーンと、モニターは違いますから。野口さんのところではちょうどいいなと思った素材をもらっても、僕らがフィルムの黒に合わせちゃうと見えていた星が見えなくなってしまう(笑)このやりとりが一番大変だったよね。

野口
監督が「この星は見せたいけど、この星は見せたくない」みたいな指示をするんです(笑)

阪本
ものすごく細かい(笑)そうやってようやく監督のOKが出たんだけど、デジタルセンター内のシアターでDCP【*4】試写をしたとき「あれ、阪本さん、星少なくない?」って言われて(笑)そんなはずはない!(笑)




【*4】DCP
デジタル・シネマ・パッケージの略。シネコンなどのDLP上映環境用に制定されたデジタル上映の規格。デジタルラボではこのパッケージの製作も行う。



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