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マイスターvol.20 映像マイスター:映画『はやぶさ 遥かなる帰還』完成記念インタビュー 「阪本善尚(撮影監督) & 野口光一(VFXスーパーバイザー)」

誰も見たことのない「宇宙の黒」

阪本
あと、僕がみんなに言ったのは「はやぶさ」が帰って来てから、いっぱいメディアにCGが出たじゃないですか。でもどれを見たって、僕には本物なんかには見えなかった。どうしてもマンガにしか見えない。それは最初にワーッと言いましたね(笑)

野口
それを言われて(笑)「はやぶさ」は基本まっすぐ飛んでいるだけなので(笑)CGで新たに何が出来るんだろうと考えていたら、阪本さんが「黒を強調したい」って言われて、ああ、それはいいアイデアだなと思いました。

阪本
そう、野口さんと一番最初に話したのは「宇宙の黒」をどう表現しようという話でね。宇宙というのは、月の軌道までを“宇宙”というらしいんですよ。それを越えると“深宇宙”になっちゃう。“宇宙”だと一杯ビジュアルが出回っているし、月や地球からの光が反射して、どう物体が見えるかというのはわかるんだけど、“深宇宙”だと参考になるものが何もない。これをどうするかというのが一番の課題でした。例えば実際には光のあたっていないところは真っ黒になっちゃうけど、それだと画が成立しないんで、ちょっと暗い部分の輪郭にラインをつけてもらったりとかして。

僕は、3億キロの距離感を出したかったんですね。地球の反射光がある“宇宙”から、太陽光しかない“深宇宙”を飛行して、イトカワという反射板の近くに行くとまたビジュアルが変わる。キャメラマンとしてのシンプルな撮影の原理に則れば、リアリティが出るんじゃないかなという狙いでしたね。僕が好きなのは、イトカワが最初ドーンとアップで出てくるところで、ほとんど光が当たっていなくて、一部だけ光って見えているじゃないですか。あのリアリティが、重厚感を出していると思いますね。


©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

野口
全部をCGで作ったんですけど、一部しか見えないのなら、裏側はあまり作らなくてよかったのかも(笑)

阪本
おおまかに言うと、監督が動きをつけ、野口さん達がキャラクターを作っていき、僕が最終的に実写とマッチングするという流れでしたね。どうしてもCGですから、冷たさが残って皮膚感が出ない。ですからアップで出てくる時はレンダリングのレゾリューション【*1】を落としてもらったり、あとは粒子を相当入れて、前後の画の粒子の質感に合わせるみたいなことは、僕がグレーディング【*2】でかなり追い込みました。それでも監督に「うーん、まだちょっとCGっぽいな」なんて言われながら(笑)感覚として実写と画の調子が違うと気持ちが悪い、というのが監督のチェックポイントで、それに対してCGとしての調整は野口さんが、僕はグレーディングでいろんな調整をしました。ボケなんかもCGでもつけてきてもらいましたし、前の画との繋がりを考えて、グレーディングの機械で補足したりもしましたね。

野口
星の奥行き感を出すためにも、随分やりとりがありました。背景の宇宙を、のっぺりした書割に見えるようにしたくなかったので、星を配置したデータを何層にも置いて、どのカットでもカメラが動くと、星のズレが少しあるようにしてあります。あと、宇宙だと星がチカチカしないんですけど、小さくするとレゾリューションだけでチラチラしてしまうので、少し大きくするとか、そこのやりとりが結構ありましたね。

阪本
今回僕は、現状の2倍の4K解像度【*3】で作りたいと思いましたね。そうすれば、小さな星でもチカチカしない。もっとも監督がもっと小さな星を作りたいって言い出したりして(笑)




【*1】レゾリューション
データの解像度 (2K)これが不足することで、ジャギと呼ばれるちらつきが発生する

【*2】グレーディング
映像の色彩や明暗、トーンなどを最終的に調整する工程。近年はDI(デジタルインターミディエイト)を用い、フルデジタルで行うことが多い 東映デジタルラボではBaselightとPabloという機材を導入している

【*3】4K解像度
映像のインチあたりの画素数を解像度と呼び、これが大きいほど高解像度となる。一般的に4Kは4096×2160ppi であり、これはフルハイビジョンの4倍にあたる



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