生きている「はやぶさ」を表現する
野口
最初に、監督やプロデューサーから、はやぶさを“モノ”としてではなく、生きているように描けないかという提示がありました。更に監督から、はやぶさが最後に地球の写真を撮るレンズを“眼”に見立ててやりたい、というお話があり、『2001年宇宙の旅』のHALをイメージしたのですが、でも「はやぶさ」はしゃべらないし(笑)眼の表情だけで生きているように見せるため、模型で位置を調べたり、いろいろな試行錯誤が始まったんですね。
阪本
どこが顔だろう、なんて話をしながらね(笑)模型のレンズが小さかったので、僕のほうで大きなレンズにいろいろ光を当てて撮影したのを、素材として野口さんに渡しましたね。
野口
それでも結局昨年の11月くらいまで監督からOKが出ませんでした。一度“はやぶさの見た目の主観”を提案して「それはいらない」と言われたりしながら(笑)最後にレンズの中心の黒目のように見える部分に“アイキャッチ”という光の映りこみを2つ入れることで、やっと「眼みたいに見える」と言ってもらえました。
阪本
監督のアイデアの勝利ですよ。イトカワや地球など、あそこに映る節目節目のものが、映画を観た人の心を掴んだみたいですね。
野口
「生きているように描く」為に、今回はツークン研究所に開発してもらった“リアルタイム・プレビュー”というシステムも使いました。はやぶさの模型を手に持って飛ばしているのを、阪本さんに手持ちカメラで撮影してもらい、CG空間に取り込むことで、みんなのコンセンサスを取っていったんです。
阪本
やってみると面白かったので、ほんとうは本格的にクレーンで軌跡を作りたかったんだけど(笑)
野口
今回は初めてなんで、そこまで踏み込むのはやめましょうと(笑)そこで方向性だけ決めて、あとは僕らで作業して、監督に確認してもらいながら動きをつけていきました。
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