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マイスターvol.19 映画マイスター:映画『はやぶさ 遥かなる帰還』完成記念 「瀧本 智行 監督 インタビュー」

東日本大震災について

クランクインの一ヶ月前に、東日本大震災が発生しました。震災が映画に影響を与えたことはありますか?

震災後一週間くらいは、東京にいても「どうなるんだ」っていう感じだったじゃないですか。もしかするとこの作品が製作を中止するんじゃないか、と不安に思わざるを得なかったし、日本中がそういう状況だったと思います。

僕自身は、できるだけそのことでブレないように、とは思っていたんですね。震災を経たことで、なにか作品に足していくようなことはしたくないと思っていました。ただ、同じ台詞ひとつとっても、震災の前と後とでは、受け取る意味がどうしても変わってきてしまう。渡辺さんの「よろけてもいい、はいつくばってもいい」という台詞も、当初はそんなに強く意図したものではなかったのですが、震災後は、全然意味が違って読めてしまう、ということはあったと思います。

僕個人で言うと、4月にオーストラリアのウーメラ砂漠にロケハンに行って、砂漠の真ん中でとんでもなく凄い星空を見たときに、やはり震災後ということもあり、いろんなことを思うんですね。何万光年彼方からの無数の光に包まれて、大きな宇宙の中では、自分なんかは砂漠の砂粒の中の、そのまた微粒子みたいなもの、人間ってなんて無力でちっぽけなんだという思いが、震災の映像と共に脳裏を横切ってしまう。

でも改めて、人類はその宇宙に行こうとしたんだ、そして何十年もかけてたどり着き、そこからこんどは帰ってきたんだと。そこまで考えると「はやぶさ」の意味が、それまで漠然と偉業としてとらえていただけのことから、もっともっと真に迫ってくる感覚が生まれたんですね。そこからこの映画を作る自分の意識が変わったし、今、この映画を作る意義にも、確信を持った気がしますね。

そういう思いが、お客さんに観終わったあとにじわりじわりとくるような映画になっていればいいなと思います。観ている時はハラハラドキドキしながらも、観たあとで感じる大きな思いが、直接的なストーリー以上に、心に残ってくれればいいな、と。

 

その思いが、ラストの満天の星にこめられているのですね


©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

そうですね。ラストの星空については、一緒にロケハンに行ったキャメラマンの阪本善尚さんが「この星空を実写で撮りたい」とおっしゃって、F35という最新鋭の高感度キャメラを準備されて「監督、これならいける、星が写せる」と。でも、何度も何度もテストを重ねて現地に行ったにもかかわらず、まったく星が出てくれなくて(笑)結局CGで星空を作ることになったんです。

それでも僕のなかで一番こだわったところなので、VFXスーパーバイザー・野口光一さんはじめ、東映アニメーションのCGチームには、それこそ30回近くやり直しをしていただきました。あの星空が、今回CGチームの担当するラストカットだったんですね。実は一度「これでいいや」とOKを出して、「全部終了!お疲れ様でした!」ってチームのみんなと握手をしたんですよ。みなさん、それまで不眠不休でくたくただし、「息子の顔も見てないから、今日は早く帰ろう」とか言いあってるんですね。

その後、僕はデジタルセンターにしばらく残って、他の作業をしていたら、また細かいところが気になりだして(笑)みんな残ってるかなあって聞いてみたら、まだ東映アニメーションにいたので、もう一回呼び出して(笑)「ごめん、こことここだけ直してくれ」。それくらい、最後まで直し続けた星空なんですね。担当したスタッフは星空の悪夢を見るようになったそうです(笑)

 

映画の中の、山口プロジェクトマネージャーのようなお話ですね

それしかないんですよね。もうちょっと、もうちょっととあきらめずにやるしかない。僕は誰も思いつかないことを思いつくような才能はないので、そうすると、ちょっとでも直して良くなるのなら直し続けたい、っていう。いまだに直したいんですけどね、許してもらえるのなら(笑)

でも本当に、CGチームだけじゃなく、スタッフみんな、100パーセント以上の力を出してくださったなと感謝しています。

 

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