東映ホーム > 東映マイスター > vol19瀧本智行監督 本作のテーマ

マイスターvol.19 映画マイスター:映画『はやぶさ 遥かなる帰還』完成記念 「瀧本 智行 監督 インタビュー」

本作のテーマ

渡辺謙さんが演じるリーダー像も、本作のテーマだと伺っています


©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

渡辺さん演じる山口のモデルになった、はやぶさのプロジェクトマネージャー・川口淳一郎さんが、強烈なキャラクターの方なんですね。僕自身直接にお会いした時には、とても柔らかくお話していただいたんですが、周りの方に伺ったり、著書を読むと、確固たる川口像が伝わってきました。川口さんの言葉に「高い塔を建ててみないと、新たな地平は見えてこない」というのがあります。非常に高い理想を掲げて新しいことに果敢に挑戦することの重要性を強調されているんですね、一方で実際の運用とか予算を取るなどのプロセスでは現実をみて対処する。理想主義者と現実主義者が矛盾なく同居しているのが、あの方の凄みなんだなと思います。周りをグイグイと引っ張り、みんなに慕われるというタイプのリーダーでは決してないけれど、確固とした自分がここにいて、何かあった時には現実主義者の側面を前面に出して行くという、なかなかいないタイプ。彼こそが、今、求められるリーダー像じゃないかと思うんですね。

その人物像を、渡辺謙さんという当代随一のスターが演じることで、多少の矛盾も丸め込み、説得力を持ってくれると思いました。通常の劇映画の主人公のように、感情移入しやすいヒーローとは違い、山口はずいぶん矛盾も抱えているし、素顔もあまり見せません。それでも成立しているのは、渡辺さんの存在感が大きいのかなと思います。

 

映画では、リーダーの周りでプロジェクトを進める、大勢の技術者達の姿に比重が置かれていますね


©2012「はやぶさ 遥かなる帰還」製作委員会

映画の前提として、これは渡辺謙さんをフィーチャーしたスター映画を作るのではない、むしろ「はやぶさ」を主人公にした群像劇なんだという思いは、渡辺さん自身、坂上さんはじめスタッフにも共通した意識でした。

群像劇なので、例えばある人物のこの印象をここで際立たせて見せておかないと、後で効いてこない、みたいな逆算は常に必要だったので、そこはとことん考えました。この段階で、この表情まで入れておくのか、それとももう一歩手前にとどめておくのかといったバランスや匙加減。しぐさ一つ、目線ひとつとっても、演出を一手間違えることで、繊細なガラス細工みたいに、ガラガラとバランスを逸してしまい、後々のシーンが台無しになってしまうんじゃないかと危惧を感じながら演出していました。

また映画のテーマにも通じますが、江口洋介さん演じる藤中は、次世代のリーダーになるんだろう、という意図を込めて描いています。ですから、渡辺さんの描かれ方と、江口さんの描かれ方がだんだんクロスしていって、次のリーダーとなる江口さんが後半クローズアップされていくように、撮影中にも意識していましたし、最後の最後、編集の段階までバランスを意識していました。


次へ

東映リリース