最新作『探偵はBARにいる』について
Q.まずは、最新作『探偵はBARにいる』を手掛けるいきさつについて教えて下さい。
テレビ朝日系で放送されたドラマ『相棒』シリーズ(2002年~、主演:水谷豊)や『ゴンゾウ 伝説の刑事』(2008年、主演:内野聖陽)で一緒に仕事をした東映テレビ企画制作部の須藤泰司プロデューサーから原作とプロットを渡されたのが数年前。
前提となっていた北海道ロケも魅力的だったし、「『トラック野郎』(1975~1979年、鈴木則文監督、主演:菅原文太)のようなシリーズ活劇路線を狙いたい」というコンセプトも面白いと思いました。そこで敢えて今風な撮り方をせず、70年代の活劇に近いタッチをやりましょうというところから企画がスタートしました。
最終的には、この作品をもって、かつての東映活劇路線を是非復活させたいという思いが2人の中にはあります。これが興行的に成功すればプログラムピクチャーとして続けていけるキャパシティを持った作品ですから。
Q.キャストの大泉洋さん、松田龍平さんのコンビはいかがでしたか?
最初に企画の話があった時点から、キャストは大泉洋さんありきでした。大泉さん以外のキャスティングはもはや考えられないという程、大泉さんのイメージが強烈に頭に刷り込まれた状態で脚本を読みました。
最初の顔合わせで、大泉洋さんは既に活劇路線でいくことを理解してくれていて、いきなり「この脚本には“乱暴なエロス”が足りないですね」と指摘されました。例えば、いきなり女性の水着がとれて「キャー」と叫び、無理やり裸を出すような演出。撮影現場ではこの“乱暴なエロス”という言葉が頻繁に飛び交い、スタッフ間の作品に対するひとつのキーワードとなりました。
大泉さんのイメージと言えばやはり「水曜どうでしょう」で、機関銃のようにまくしたてている印象が強かった。ところが、実際にお会いするとベースは“二枚目”のかっこいい人だったので、大泉さん=探偵役のイメージを想像しやすかったです。大泉さん自身もブレずに的確に役を作ってくれたので、仕事のやりやすい俳優さんでした。現場でも“ノッている”感じが、こちらにもビシビシ伝わって来ました。
松田龍平さんは、自分からアイディアを次から次へと出してきましたね。「眼鏡をかけよう」というのも松田さんから出たアイディア。例えば無精ひげをたくわえモサッとした、いかにも強面な・・・というストレートな風貌ではなく、外見と中味にギャップがある方が面白いと言うんですね。そういう訳で、ルックスとは裏腹に腕っ節が強い相棒“高田”というキャラクターが出来上がりました。
そして松田さんは、現場で二度と同じ芝居はしないんですよ。事前に全くタイプの異なる芝居を何種類も準備してから現場入りして来る。だから、テストごとに違う芝居を見せてくれるんです。こちらはそれを見て、取捨選択をしていけばよいという非常に贅沢なシチュエーションでした。次はどんな芝居をやってくれるのか、撮影中ずっとワクワクしながら見ていましたよ。
完成した作品を観ると、あの独特の雰囲気は松田さんにしか出せない味で、非常にはまっていましたね。
【目次】
- 監督の作品にかける思いや撮影エピソードについて(1/8)
- 最新作『探偵はBARにいる』について(2/8)
- 撮影現場について(3/8)
- こだわりの撮影について(4/8)
- 新潟東映会館について(5/8)
- 監督デビューについて(6/8)
- これまでの作品について(7/8)
- 今後について(8/8)