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マイスターvol.17 ここから映画は生まれる:第三回 京都フィルムメーカーズラボ

時代劇映画の聖地・太秦の撮影所で行われる育成ラボ 4

松竹チーム 初日

この日は、同じ太秦の松竹撮影所でも、松竹チームの撮影が行われている。

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松竹のオープンは、映画村のオープンに比べて小ぶりで、セットのディテールの作りこみが素晴らしく、流石は映像京都の伝統と唸らせられる。

松竹チームのシナリオは、アンドリヤナ・ツヴェトコビッチによる、マケドニアの昔話を時代劇に翻案した幻想譚。ほぼ一件の民家を舞台にした会話劇で、“動”の東映に対し“静”の松竹という対比が面白い。

松竹チームの総監修は、「必殺」シリーズで印象的な、影を多用した画面を作り上げた“光と影”の魔術師、石原興監督。石原からは事前にスタッフにセットの平面図が渡され、カットごとのキャメラアングル、照明プランを考えてくるよう、指示が出されていたようだ。




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現場のセッティングはその図面を見ながら進められるため、非常にスムーズ。また監督のエリック、撮影のジェイコブが直接英語でのコミュニケーションを取れるため、決定によどみがない。

この現場の核は、助監督のマエダだ。オーストリア監督との現場経験があり、自身も劇場映画の監督を務めるマエダが、監督やキャメラマンと、スタッフ間のコミュニケーションのハブになっている。監督の下した決定を的確に各国語に訳し、メンバー全体に元気な声で指示を出す。撮影所のサポートスタッフもラボメンバーと一体になる。

「例えばリテイクになったとき、何処が悪かったのか、何故撮り直すのか、全員に伝えて納得させるのが日本式。海外の現場とはちがうやり方ですが、ここでは日本人も多いので取り入れています(マエダ)」




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また松竹では、立命館大学との官学共同などにより、学習のプログラムでは経験をつんでいる。スタッフには、ラボのメンバーが豊かな撮影体験を持ち帰ることができるよう、ノウハウが徹底されている印象を受ける。

暗い室内、少ない照明で、あんどんの光のゆれた感じを造りたい、そんなリクエストに即座に答えるのは、スタッフとしてチームをサポートする「剣客商売」「赤かぶ検事」の監督、井上昌典。

「撮影所のやりかたを押し付けないよう心がけています。ある意味常識を外れていても、彼らのイメージに近づけるようにしています(井上)」

非常に統制の取れた、大人の現場だなあ・・・午前中の東映チームを見た後だけに、余計にそう思えた。さて、この違いはどう映像に反映されてくることか。




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東映チーム 夕刻

なんとか夕刻までに、アクションシーンの撮影は終了。続いて、急遽シナリオに追加された屋内シーンを撮影することになった。

撮影所の会議室に場所を移し、現代シーンの撮影。暗がりの中、デスクに座る人物のモノローグ。印象的な間接照明をあっという間に作り上げた、照明技師・鹿野の手腕にメンバーが感心する。




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出演者は、時代劇パートとの対比を出すため、カナダから参加のソルが選ばれた。VFXに造詣が深く、ひとりで3ヶ月かけてユニークな短編を作るなど、ソルの“GEEK(オタク)”な雰囲気にはぴったりの役柄だが、演技経験のない彼は少しナーバスになっているようだ。

そんなソルに、タマキは細かな演出をつける。「だんだん左手が石のように重くなる」「体を指だけで支えるように」など言葉で説明したり、机を叩いてデスクに倒れるときの勢いや音を表現したり、実際に指の動きを演じてみせたりしている。

ここでもタマキは粘る。クローズアップ、パン、手持ちと様々なカットを重ねていく。疲労も重なり、メンバー間に締まらない空気が流れ始めた。



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そんなとき、助監督のクロエが大声で「OK, we are going for TAKE!!」と掛け声をかける。

この日、撮影中盤から、監督とメンバーの間でコミュニケーションの仲立ちの役割を務めていたのは彼女だった。何か議論が始まると「でも監督はこう言ってるわ」「ユースケはこう考えているのよ」と、監督をディスカッションの中心に据えるようリードする。

撮影は予定の17時を大幅にオーバー。矢嶋がクロエに撮影をそろそろ終わりにするよう伝えると、クロエは自分でみんなに伝えるのではなく、真っ先にタマキに伝えた。これを受けてタマキは全員に「撮影所のみなさんもお仕事があるので、あと10分で撮影を終了します」と周知、現場が引き締まる。監督にイニシアチブを取らせたい、クロエの配慮。こうして、初日の撮影が終わった。

 

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