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マイスターvol.17 ここから映画は生まれる:第三回 京都フィルムメーカーズラボ

時代劇映画の聖地・太秦の撮影所で行われる育成ラボ 2

京都・太秦の東映撮影所。普段から撮影中のスタッフや役者さんたちが、時代劇の扮装そのままで闊歩するという、非日常的な光景が見られる。そんな撮影所の中でも一際人目を引く集団が、会館2階・大会議室に集まっていた。

今日は、明日からの撮影を前に、スタッフ顔合わせを兼ねたオリエンテーションが行われている。総勢20名の若者たち-様々な国からやってきた、人種も国籍も異なる彼らは、これからここ太秦の撮影所で、生まれて初めて「時代劇映画」を製作するのだ。

概ね色彩に乏しいことの多い(汚れてもいい)格好の撮影所のスタッフの中で、彼らの思い思い、色とりどりのファッション。若さとエネルギー、未知の映画への好奇心に溢れた表情が印象的だ。

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自己紹介とスケジュールの確認を終え、松竹チーム・東映チームの10名づつに分かれた一行は、すぐさまプリプロダクション・ミーティングに入る。

東映チームのシナリオは、日本より参加のサカハラによるシンプルな剣戟。アクションシーンを生かす演出プランを提出した、こちらも日本から参加のタマキが監督にあたる。チームの進行は、東映撮影所で製作を務める矢嶋聖がサポート。海外留学の経験のある矢嶋は、既にチームメンバーから“Jimmy”と呼ばれるほどの信頼を得ている様子だ。

ミーティングでは、監督が演出のプランをメンバーに伝え、撮影所のスタッフが助言する形で進む。チームでも若手に入るタマキは、英語があまり得意でない様子。手振りを交えて英語で話をしようとするが、細かい話は日本語での会話になり、メンバーに対しては矢嶋の翻訳が必要になる。

合成にブルーバックを使いたい、クレーンは使えるのか、別の場所での撮影を追加したい・・・事前のメンバー間の話の中で、膨らんでいったイメージを撮影所スタッフに話すタマキ監督。しかし現実的には、2日という限られた時間、追加の予算もないなかで、出来ることは限られてくる。それら一つ一つを、冷静に諭し、ダメを出し、現実的な方法を提示する矢嶋。思わぬ展開に判断が出来ないまま、悩みこんでしまうタマキ。

ここで、総監修であるベテラン照明技師・安藤清人が助け船を出した。「まずは現場に行ってみよやないか。話はロケハンの後、それからや」。

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撮影は、撮影所に隣接する映画村・江戸の町並みのオープンセットの一角にで行われる。ふだんは新撰組でおなじみ「池田屋」を模した家屋が、既に美術スタッフの手により、奇妙で味のある居酒屋に変身を遂げている。その出来栄えに、メンバーたちの目も輝きだす。

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ロケハンには、柴田善行、堀田貴裕、鎌森良平の3名の役者陣、そしてジャパンアクションエンタープライズ(JAE)所属の殺陣(タテ)師・中村健人が同行し、殺陣の打合せを行う。

早速、役者をセットの中に呼び入れたタマキは、持参のiPhoneを取り出した。役者の動きやアングルを、手元のモニタで見ながら画面つくりをしようとしているのだ。熱が入るタマキに対し、まだ具体的に何をすればいいか戸惑うスタッフは、手持ち無沙汰の様子だが・・・

続いてセットの外に移動し、最後の立ち回りの殺陣の打ち合わせ、中村がさまざまにアイデアを出し、役者陣がそれに応えアクションを繰り広げる。ぶつかる刀と刀、生身のからだがぶつかり合い。はじめて、目の前で繰り広げられる“チャンバラ”の迫力に、メンバーたちの眼は釘付けに。

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「プロの役者さん相手に、芝居をつけられるなんて、彼らはとてもよい機会を貰っていますね」という筆者の問いに、現場を見守っていた安藤さんは、ふと口にした

「見てみ、キャメラマンと監督が別のとこにおるよ」

キャメラマンは香港からの参加者、イエック。寡黙に現場を見つめる姿勢に、確かなこだわりがありそうな雰囲気を漂わせている。

「監督とキャメラマン、あの二人が同じ画みとかんとな・・・」

スタッフから“アンディ”と呼ばれ親しまれるこの大ベテランは、早くもチームのアキレス腱を見取ったようだが・・・

続く衣装合わせ。5分間の中で、倒された敵が何度もよみがえり、強くなっていくというSF設定。大きな衣裳変更も出来ない状況で、キャラクターの変化をどう可視化するのかというアイデアが交わされる。鉢巻、マスク等の小道具は効果があるのか、それらは「時代劇」のマナーから大きく外れてはいないのか。

SFらしい合成効果を入れたい、時代劇である以上ハラキリは是非撮りたい・・・メンバー各々のジャンルへの憧れ、映像への思いが交錯し、議論がなかなかまとまらない。その一つ一つの問いに、矢嶋が助け船を出していく。

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予定時間を大きく越え、結局多くの課題を積み残したまま、東映チームの一日目は終了した。

※メンバーは堀川中立売(清明神社そば)にある、町屋を改築したスタジオで合宿。外国からのメンバーは、その風情ある建築や、初めての銭湯を楽しんでいる。一方で、明日からの撮影にそなえ、監督と脚本家、メンバーたちが遅くまで話し合っている。

 

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