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東映デジタルセンター完成記念「音響設計の世界」

“音響設計”という概念を入れた新施設づくり


東映デジタルセンターにおける音響設計
司会)
東映デジタルセンターはお二人でどう進められたのですか?
豊島)
先ずはベースの話から積み上げて行きました。例えばこの部屋はNC(※3)の値がいくつ、残響時間はいくつとかから始めました。
 
※3:空調などの騒音レベルの評価値
眞道)
昭和30年代は録音機材の種類もなかったですし、特に当時の光学録音(※4)はそんなに良いものではありませんでした。
現在のデジタル化の状況下では、細かい音まで録ることができますし、作業のやり方も変わってきています。昔FOLEY(※5)は、ダビング(※6)と同時にやっていて、オーケストラの音楽と、ミックスをする度に同録していました。

その当時のやり方に沿って作った建物でしたから、新しく建てるのであれば、デジタル時代の “音響設計”という概念を入れる必要があるとなりました。そこで今回、サウンドエディットルームという小さな部屋から一番大きな試写室であるTHEATERまでを一つのコンセプトに従って作りました。
 

※4:映画のフィルムに電気信号を光学的なパターンに変換して記録する方式
【写真:FOLEY】 ※5:FOLEYは足音や衣擦れなどの映像に合わせて効果音を録音する方法。東映デジタルセンターでは、フォーリーアーティストの技術を引き出すための多様な床や水周りの施設を完備。
遮音性能とフルデジタルのシステムによってピュアーな効果音を録音できる
※6:映画における音(台詞・音楽・効果音)の最終ミックス作業
司会)
東映デジタルセンターの音環境で目指したものは?
眞道)
一つは“遮音”です。二つ目は“響き”です。後は“NC値”です。この3点において適切な数値を決め、それを実現させることが不可欠でした。特に遮音に関しては建築時しか出来ない事がありますので、重要なポイントになります。音は気体である空気の振動と床や壁などの固体を伝わってくるものに分けられます。

空気の振動は密閉してしまえばよいわけですが、そこでは人間が実際に作業するわけですから、空調のための穴が必要なりますので、そこからの音の出入りも注意しなくてはいけません。
固体である壁や床から音は防振ゴムを敷いた浮き床と二重の壁で遮音しています。
豊島)
“NC”は静かさを表す数値で、ある基準まで下げないとマイクがノイズを拾い、音が濁ってしまいます。
すっきりした音を作るのが基本です。“響き”を少なくするとすっきりとした音が録れますが、音に面白みがなくなる。極端な話、無響室を作るのは簡単ですが、その中で録った音は全く味気ないものになります。部屋の大きさ等に応じた、最適な残響時間(響き)を眞道さんたちと一緒に数値化していきました。
眞道)
ミキシングの事前作業であるサウンドエディットの作業で、エアコンなどの空調機器の中で作業してしまうと、現場録音された音の中に入っているノイズに気がつかず、ダビングの時に気がつく事もあります。ですからサウンドエディトルームでも低いNC値の部屋を作らないといけない。そうしたことがダビング作業をスムーズに進めることになります。
司会)
試写室における音響づくりとは
豊島)
全部の数値が大きくなります。あれくらいの大きさになると、むしろ屋外ステージに近くなってきます。しかし壁に囲われていますから、そこで残響時間というものが出てくるんです。そのため吸音設備が必要になってきます。試写室というよりスタジオに近いレベルになっていて、ダビングステージという音を製作するためのコントロールルームのような高レベルの環境になっています。日本でトップレベルの試写室であることは間違いありません。
眞道)
試写室は様々な方々に最終プレゼンをする場になります。画も音においても一番良い環境を提供したかったんです。
 
【写真:THEATER・シアター】
35mmフィルム、2K、4Kデジタル上映に対応。10mのスクリーンに水平投射での画質確認。ワールドクラスの音を目指しアカデミーシアター(米国アカデミー賞のノミネート発表式が行われる世界的に有名な劇場)と同スピーカーを使用。
司会)
他の部屋はどうですか。
豊島)
ADRには大きなガラス窓があります。音響設計的にはこれは大変なことで、反響が大きくなりますから。ガラス面の角度をつけるなどいろいろ工夫を施してあります。
眞道)
ミキシング側に居る監督や音のスタッフと俳優さんと間で、うまくコミュニケーションを取るにはどうしたらよいかということで悩みました。そして大きなガラスで互いが良く見え、一体感が生まれると考えました。そして結果的には良かった。
 
【写真:ADR(アフレコルーム)】
マイクプリアンプからモニターまでフルデジタル化することで音の劣化を徹底的に排除。
二重コンクリート壁と浮き床構造より外部からのノイズを遮断。
空調機器を使っていても測定不可能なNC値を実現。

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