警視庁捜査一課9係 season12
長年にわたって9係の係長として番組を支えていただいた渡瀬恒彦さんへ深く感謝し、心よりご冥福をお祈りいたします。
- 2017年4月12日~2017年6月7日放送
放送は終了しました。ご視聴ありがとうございました。
「加納倫太郎が早乙女静香を苦手な理由」
親愛なるターシャ・テューダー様
私と登紀子は共に日本女子大で登紀子は二つ後輩。私は大学を首席で卒業しましたが就職はしませんでした。わからないものでさして本気で取り組んで来なかった華道で新進の華道家として在学中から脚光を浴びる事になったのです。私の華道展でいつまでも作品を見てくれて人がいました。私が長野を旅した際に冠雪が残る北アルプスをバックに広がる菜の花畑に魅了され、童謡『朧月夜』と名付けた作品でした。閉館間際になって、一人になっても見続ける彼に「気に入ってもらえましたか?」と訊ねると「僕は間違っていた。技巧に走り過ぎていた。自然は美しい。ありがとう」と言うと彼は私の手を握ったのです。それが聡介との出会いでした。聡介は早稲田の文学部の学生で作家を目指し、日々小説と格闘していました。聡介は私の生け花の一のファンとなり、まだ逡巡していた私を華道家としてやっていけると力強く背中を押してくれたのです。私たちは親に内緒で同棲を始め、聡介の書いた小説がある新人賞を取りました。タイトルは『朧月夜』でした。
一方、登紀子と言えば大学に入るとお稽古事は適当になり、テニスサークルに入り早大生にモテモテのキャンパスライフを謳歌していたのです。成績も下位の方で心配した登紀子の母親から私に相談がありました。しかたなく私は登紀子に注意すると、小中高と親の言われるままお稽古に文句も言わず通ったんだから大学くらい楽しませてよと明るく言うのです。静香姉さんこそ文系男子と付き合ってないで体育会系の男も知ったら、この間、早慶戦の空手大会を観に行ったら鳥肌が立った、慶応の人、立ち会った瞬間、早稲田の人の眼力に圧倒されてお尻を抑えて退場したの、本当に強い男はああいう人のことを言うんだわと登紀子は続けました。その早大生こそ加納倫太郎のことでした。私はこの後すぐに思わぬ形で加納倫太郎と出会うことになります。
早乙女静香拝
To be continued CASE3 殺人ピアノ曲
CASE2
ゲスト
来栖杏子――筒井真理子
来栖康利――上杉祥三
下田栞――平澤草
スタッフ
脚本:深沢正樹
監督:杉村六郎
(文責・金丸哲也)