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マイスターvol.18 映画マイスター:映画『探偵はBARにいる』完成記念 「橋本 一 監督 インタビュー」

監督デビューについて

Q.どんな助監督だったのでしょうか?

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京撮で助監督としてついたのは、何故か降旗康男監督の『藏』(1995年 出演:浅野ゆう子、松方弘樹)や澤井信一郎監督の『福澤諭吉』(1991年、主演:柴田恭兵)という文芸作品。自分が目指したいものとはまるで違うタイプの映画が多かったですね。

見た目で大人しそうに思われたからでしょうか?もちろんそれらの現場についたことで、勉強させてもらったし、楽しい思い出も一杯あったけれど、どこかで自分の思いを曝け出す捌け口を求めていたのでしょう。当時よく、酒を飲んでいる時に、自分の好きな映画(しかもマイナー)のストーリーを身振り手振りを交えて一人面白おかしく実演していました。

後日、その作品を観た人が、僕に向かって「橋本の映画解説の方が、本篇よりよっぽど面白かった」なんて言われて。自分で勝手に作品を補完して語っていたのかもしれません。子供の頃見た「独占!女の60分」が身に染み付いていたのですかね・・・。

当時は、ベテランの映画監督、中島貞夫さん・山下耕作さん・舛田利雄さんといった巨匠たちが競い合うようにテレビの時代劇スペシャルを撮っていました。中でも、1992年元旦にTBSで放送された5時間ドラマ「平清盛」(出演:松平健、松方弘樹)の工藤栄一監督との仕事は、刺激を受けました。工藤監督は段取りや予定調和を良しとしません。

今ならば、俳優さんがお芝居を軽くやってみる“段取り”を経て、カメラポジションを決め機材のセッティングに取り掛かりますが、工藤組では“段取り”なんてやりません。それでもキャメラマンが自分なりの考えでカメラポジションを準備して待っていると、工藤監督は「そこからじゃない。ここからだ!」と全く別のポジションを指示します。

しかも、そこから撮るのではセットの広さが微妙に足りず見切れるので困っていると、工藤監督は「それならセットを作ったらいいんや」と自分もスタッフと一緒になって、わっしょいわっしょいとセットを作り始めたりする人でした。

ある時は、スタッフが準備している間、監督はセットの片隅に敷かれた畳の上に寝転がって、撮影とは無関係の本を読んでいる。何してんだ、と思っていたら、突然起き上がって「この本のこれを使おう!」と提案してくる。それがまた面白いアイディアで。工藤監督には「映画とは常識を壊すこと、一線を越えることだ」というのを教わりました。

 

Q.そして1997年テレビドラマ『御宿かわせみ』(テレビ朝日系OA、主演:沢口靖子)で監督デビューするわけですが・・・。

クランクインの日が、丁度29歳と364日目。感慨深い仕事となりました。スタッフにバックアップしてもらいながら、これで駄目ならそれでもいいやと割り切り、好き勝手をやらせてもらえた現場でした。今考えるとぞっとするようなことも平気でやっていましたね。「流して撮るということをしないんですか、俳優のスケジュールはないんですよ」と助監督に怒られてもお構いなしでやっていて、毎日撮影所に通うのが楽しく仕方がなかったです。

 


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