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Vol.2 オープニング企画第二弾 「森田芳光作品と東映東京撮影所」

撮影所のデジタル化について

「デジタル」ということ

デジタルセンター

2010年完成予定 新デジタルセンター

森田撮影所も同じだと思います。どんなに設備が良くても、「人」で成り立っていると思います。

生田 同感です。撮影所の基本的なコンセプトは人です。僕は、映画は「デジタル」だけではできないと思っています。美術、操演、小道具、衣装、メイクなどデジタルではできない。昔ながらの技術、アナログの世界が必ず必要だと思っています。当社では新たに「デジタルセンター」を建てますが、それだけではなくて確かな技術が存在し、アナログと両方を兼ね備えた撮影所にしたいと思っています。結局デジタルを扱うのは人間ですから。
森田今ダビング作業中ですが、同じことが言えます。例えば、僕が人間の表情を見ながら音を付けると言ったとします。仮にデジタル化した人間が作業していたら、その意味が分からないですよ。やはりアナログの、"人間の機微"みたいなもので音を決める。それを助けてくれるのがデジタルの技術だから、互いが結びつかないといけない。デジタルっていうと話が全部通じると思っている節がありますが、それは全然違うと思います。人間は二進法じゃないですからね(笑)血も涙もある。
確かに製作において時間の短縮化はあります。そうした時間を人の話し合いに使えて、コミュニケーションが深くなるというメリットはあると思います。

生田 映画は、やはり人との関係でしかできては来ないものなんです。僕は20年ほど傍系会社にいましたが、ほとんど外部の会社やフリーランスの方々と仕事をしてきました。撮影所に帰って来て、「これからの時代、映画やテレビの現場は、人と人の関係でしか成り立たない。組織で映画作る時代は終わった」と言いました。もしかしたら、東映や松竹のプロデューサーが共同で映画を作って、東宝で上映することがあるかもしれないって。映画って本当に人と人との関係でしか作られない。僕はそういうこと散々言ってきました。最初は反発もあり苦労しましたが、皆に徐々に理解され、サービス精神がやっと根付いてきたと思っています。

森田僕も自主映画から始めましたが、大変でした。当時は9割以上、助監督の人が監督になるものだという風潮があって、ある作品で監督として認められセットが使えるようになり、そこでの経験が「家族ゲーム」(83年)へとつながっていきました。今はいろんな出身の監督がいますが、その頃僕なんかは珍しい存在で、逆に部外者だから人に対して「礼節」を持たないといけないと思いました。

生田 経験や環境もあったと思いますが、それは森田さんの性格によるところだと思います。僕も人付き合いが得意な方じゃないから。

森田よく知っていますね(笑)人見知りするほうですよね。僕もそうなんです。やはりどこか似てるんですね。人嫌いではありませんが、恥ずかしいっていうか。たまに冷たいって言われるんですよ。(笑)

若い世代について

森田 僕の組では、結構上下関係があって、若手でもしっかりしていると思います。最近の若者はよく覇気がないと言われますが、自己の向上心は、人間の業みたいなものだから、誰もが持っているものだと思います。表面に出さないだけじゃないかな。一見人と争うのが嫌だとか、そういう姿を見せたくないとか。彼らにどう接すればいいかというと、やはり話かけることだと思います。その人の話を、プライベートなど仕事とは関係ないことを少し振って見るとか。
そうすると、急に関係の糸がほどけるんです。また、話されたいという人も多いかな。いったん話すとたくさんしゃべる、僕もそうだったから良く分かるんです(笑)今の子は、技術の吸収は早いですから、コミュニケーション力がもっと付くといいなとも感じます。もったいないですね。

生田 昔は良く飲みに行って話をしたものです。僕は酒を飲まないんですが、昔はみんな撮影が終わるとよくスタッフルームで飲んでましたね。

森田僕も酒飲めないんですが、よく酒が飲めないと駄目だとか言われました。(笑)ただ僕は結構若い人たちの生活スタイルに抵抗はありませんね。無理に飲みに付き合ったりするより、自分の時間を有効に使って、好きなことや創作活動などに使う考えなんかは僕は共感できます。

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