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Vol.2 オープニング企画第二弾 「森田芳光作品と東映東京撮影所」

撮影所マイスター・森田芳光監督登場!

森田監督は、製作現場として東映東京撮影所を使って頂いている監督の一人。
今回、生田 篤 取締役 東京撮影所長との間で、スペシャルな対談が実現しました!!

森田芳光監督

 

【森田芳光プロフィール】

1950年、東京生まれ。大学時代から8mm映画を製作し、28歳の時に撮った「ライブ イン 茅ヶ崎」が話題となり、81年『の・ようなもの』で劇場公開映画デビューを果たす。以後、「家族ゲーム」(83年)「それから」(85年)「キッチン」(89年)「(ハル)」(96年)「失楽園」(97年)「39 刑法第三十九条」(99年)「模倣犯」(02年)「阿修羅のごとく」(03年)「海猫」(04年)「間宮兄弟」(06年)など多数作品を手がけ、日本映画界を代表する監督の一人となっている。「家族ゲーム」「それから」でキネマ旬報ベスト・テン第1位、「阿修羅のごとく」で日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞。2009年秋には13年ぶりのオリジナル作品となる「わたし出すわ」が公開の予定である。

生田 篤

【生田 篤プロフィール】

1944年、新潟県生まれ。62年東映株式会社入社。東京撮影所製作部に配属。65年から関係会社数社に出向の後、85年同社東京撮影所第一企画製作部に復職。2003年東京撮影所長、04年取締役就任(いずれも現任)。また2003年より関係会社である(株)東映テレビ・プロダクション社長に就任している。

森田監督&生田所長の不思議な関係をさぐる

失楽園

「失楽園」DVD発売中。4,935円(税込)(発売元:角川映画、販売元:角川エンタテインメント)
©1997「失楽園」製作委員会

 
生田監督に初めて会ったのは『失楽園』の時です。過去に当社撮影所の一部を利用して頂いたことはありましたが、本格的にセットを組んで撮影したのは『失楽園』からでした。

森田東映で初めて撮った映画は『ボーイズ&ガールズ』(82年)。その時はロケばかりで、『悲しい色やねん』(88年)もそうでした。生田さんとは、最初は世間話をするような仲でしたよね。当時、生田さんはまだ所長じゃなかった。

生田確か開発事業部という部署があって、外部からの受注窓口で、そこの部長だったと記憶しています。当時森田監督が来られるということで、セットに挨拶に行きました。

森田 その時また撮影所を使って頂きたいとのことで、“割引券”か何かを頂いたんですよね。すごく嬉しかったです。

生田あれは当時所長の坂上順氏(現、株式会社東映京都スタジオ社長)のアイデアだったんです。

森田 また使ってくださいという気持ちが“割引券”という形で表れていて、決して仰々しくなくてユーモアのあるものでした。何を割引いてくれるかは書いてありませんでしたけれど。(笑)

撮影所に対して思うこと

森田 今、(東映東京撮影所は)こうして設備投資をされていますが、僕がいつも感じるのは、人が「ホスピタリティ=もてなし」を持っていないと、何か撮影所に行きにくいということです。やはり撮影所の方たちがいかに暖かく迎えてくれるかで、僕らは居心地の良さを感じるんです。それは仕事にものすごく影響してきて。物理的な環境も大事ですが、やはり「人」が大きいです。

生田僕等は外部の仕事を受けなくてはいけない。でも外部の仕事はそれ程多くはありません。大体配給会社によって使用する撮影所は決まるじゃないですか。だから私共にそんなに多くの仕事の話は来ない。ただ一回来て頂いたお客さんには、割引券ではありせんが、また来て頂けるよう大事にする。消極的営業かもしれないが、それに徹していこうと、僕は常日頃からうちの人間に言ってきたつもりです。例えば大道具の一人とっても、外のデザイナーさんと接触するわけですから、またこの人にやって欲しいとか、そうした声が掛かるように仕事をしていこうと言ってきた。外に出て仕事を下さいって言える機会はそうはないですから。

森田 そうした姿勢が行き渡っていると感じます。ちょうど撮影の途中で、クレーンがなかったんです。そうしたら、東映の人が「うちので良かったら貸しますよ。」と言ってくれました。すごく助かった記憶があります。そういうことって普通考えられないじゃないですか。特機は特機で、料金が発生することですし。

生田僕達は、撮影所とはそういうものだと思っていますから、あまり感じないですね。

森田 ところで、東映の食堂でどうしてあんなに安いんですかね。

生田これには理由があります。食堂で働いていらっしゃる従業員の人件費、水道・光熱費、設備費、場所代等を全部東映が負担しているからです。委託業者側は材料費しかお金がかからない。だから安いんですよ。

森田 どうしてそういう経緯に至ったのですか。

生田昔、食堂は東映の従業員の為の福利厚生施設でした。所内の従業員はほとんど社員でしたから。その後外部の方々が利用されるようになりました。ただ料金を上げる訳にはいかないですから、未だに現状を維持しています。皆さんには少しは喜んで頂いているのかなと思っています。

森田 大きい事ですよ。先ずびっくりします。

生田撮影所の事業部の立場としては、お金を稼ぐ部署なので、もう少し料金を上げたいと考えたこともありました。ただ映画業界では少し値上がりしただけでも、あっという間にマイナスイメージが伝わるものですから止めています。ですから、安いのは東映が補助しているからなんですよ。

森田 それは食べる側も分かっています。東映がここまでヘルプしているということが嬉しい。それと僕が不思議なのは、撮影所は外部からの入場に対して厳しいですが、大泉はちゃんとそうした警備をしながら、来る人の顔をしっかり覚えて暖かく迎えてくれる。

生田セキュリティーは大事でしっかりと対応していますが、何か堅苦しい、窮屈な思いを皆さんにされないように心掛けています。

森田 一番大事だと思うのは、この人は顔パスっていうか、守衛さんが自分のことをしっかり分かっている。それが欲しいんです。例えば長年映画をやっていても、何度も同じ書類を書かせられるとか、サインするとか、たまに納得いかない時もあります。入退場を始めとして杓子定規に対応されると、映画自体が「HOTな味わい」が無くなってしまう。中でも入口は大切で、厳しいなかでも、「こんにちは」って挨拶されるような経験値が欲しいと思います。掃除の方からも顔を覚えられて、挨拶をしてもらうとうれしいものですよ。
海猫

「海猫」DVD発売中。5,460円(税込)〔原作:谷村志穂(新潮文庫刊)、監督:森田芳光、脚本:筒井ともみ、出演:伊東美咲、発売元:東映ビデオ〕
©2004「海猫」製作委員会

生田そういった従業員教育を、末端まで含めてちゃんとやっていかなくてはと感じています。これからデジタル化されてどんどん良くなっていきますが、やはり「人」を忘れてほしくないと思います。先ずは人で、ただいろいろな方がいますから時間を掛けて教育していくことが必要でしょう。そういえば森田さんが『失楽園』で来られた時、ある人から聞いたのですが、オールスタッフ打合せで「僕のスタッフに挨拶の出来ない人はいりません」とおっしゃったと聞きました。

森田結局僕らって傍若無人のところがあるじゃないですか。例えば車を、人を止めたりとか。だから、皆さんに迷惑を掛けているからこそ、人に謙虚で、良い人間でなくてはならないと強く思っています。特に地方ロケでは反感を買ったりしたらお終いですから。それは常にスタッフに言っています。

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